豪雪地帯から生まれた新しいエクササイズ!“ジョセササイズ”ってなに?

日本有数の豪雪地帯として知られる福島県会津地方では、除雪は暮らしと切り離せない大事な仕事です。

しかし、真冬の屋外作業はそれだけでもとても辛いもの。雪国の人々にとって除雪は、長らく厄介事でもありました。

しかし!
そんなイメージに一石を投じる活動を行っている集団が現れました。

その名も「日本ジョセササイズ協会」
一体どんな活動なのか、会長の鈴木孝之さんにお話を伺いました。

きっかけは下心?
ジョセササイズ誕生秘話

鈴木さんが“ジョセササイズ”をひらめいたのは今から約10年前。
いつもよりも積雪の多い年末のことだったと言います。

鈴木
「兄弟たちが実家に帰省してくることになり、私としては雪かきの人出が増えるので喜んでいたのですが、いざ帰って来た彼らは当然そんなことやりたいわけもなく(笑)

これはストレートに言ってもダメだと思った時に、“一緒に運動しよう”と持ちかけたんです。お正月はただでさえ体がなまるので、ちょっと外に出て運動しない?って。

そうしたら意外とやる気になってくれて、これは使える!と思いました」

もうお分かりですね?

ジョセササイズとはすなわち「除雪」+「エクササイズ」のこと。キツイ労働と思われがちな雪かきを、エクササイズと呼ぶことで楽しく前向きなイメージを創り出しました。素晴らしい発想の転換ですよね!

その後、鈴木さんは勤め先である磐梯町役場から人事交流事業の一環で西会津町へ。そこで知り合った同世代の若者たちに、長年温め続けたジョセササイズの話をするとこれが大ウケ。お互いの“除雪あるある”を披露したりと、大きな共感を呼びました。

日本ジョセササイズ協会会員が集合!

そして2015年、せっかくのユニークな発想をもっと多くの人に知ってもらいたいという思いから、有志が集い、「日本ジョセササイズ協会」が発足したのです。

「自分たちが楽しむこと」を
大切に

では、具体的にジョセササイズとはどのようなものなのでしょうか?

鈴木
「ターゲットとするのは雪国在住の10~40代の若者。またはこれから雪国へ移住を考えている初心者です。

除雪というとスコップで雪を投げ捨てるようなイメージを持つ方もいると思いますが、私たちはスコップで少しずつ積雪箇所を崩し、それをスノーダンプという道具を用いて雪捨て場に運ぶまでを基本動作としています。

そこに、例えばスノーダンプで雪を運ぶときにお腹を凹ませるように力を入れるだとか、雪を捨てる際に素早く引くなど、エクササイズの要素を取り入れました。

効果に関しては実際に内科医の先生に監修していただき、食後に行うことで糖尿病の予防になるということもわかりました。

また、無理をして腰を痛めないよう、フィットネススタジオにウォーミングアップ体操も作っていただいています」

さらに、鈴木さんによるとジョセササイズには体を鍛えるほかにも、4つの効果があるといいます。

すなわち、除雪を始めるまでの葛藤に打ち勝てる精神的効果、目の前から雪がなくなる達成感、家族に感謝される満足感、そして地域の人たちとコミュニケーションができ、お年寄り世帯の負担を減らす社会的効果

これらを総合して、「周りの人も幸せにできる初めてのエクササイズ」と定義づけています。

言葉のユニークさから一見“ネタ”なのでは? と思われがちですが、全くそんなことはなし。むしろ大真面目に取り組んでいるからこそ、よりその個性が際立っているとも言えます。

気になる運営資金に関しては会員費やマニュアルブックなどグッズの売り上げでまかなっているそう。

公式グッズのひとつ、通称ジョセパーカー。
胸には雪かきする人のイラストが

鈴木
「こういった活動が長く続かない理由の背景に、持ち出しが増え、不満がたまってしまうという側面があると思います。

だから私たちは、なるべく自分たちが疲れないように、資金は自分たちで稼ぐ仕組みを作りました。

第三者の意向が入らないよう、補助金も使いません。あくまで自分たちの世界観がブレないように、楽しめればそれでいいと思っているんですよ」

現在正会員は15名。ほとんどは西会津町在住の若者たちですが、中には会津若松市など近隣自治体から参加しているメンバーも。

SNSでの情報発信も功を奏し、Facebookのフォロワー数は1500人を超えました。デザインができる、イラストが描ける、など特技を持つメンバーがいるのも大きな強みのひとつです。

鈴木
「ほとんどは “西会津若者町づくりプロジェクト”という創業やブランディングなどについて学ぶ講座のメンバーたち。

ジョセササイズはその勉強を活かす場という要素もあり、それぞれの能力もどんどんレベルアップしているのを感じます」

「雪国はツライ」から
「雪国は楽しい!」へ

ジョセササイズを取り入れたボランティア風景

雪が降らない地域に住んでいると、除雪そのものがピンと来ない方も多いかもしれませんが、ちょっと想像してみてください。

朝起きると玄関の外に50センチを超える雪が積もっていた時。会社に行くにも学校に行くにもまずこの雪を片付けないといけません。

やっと除雪が終わって会社に着くと、今度は会社の前の雪かき。仕事を終え家に帰ってきたならば、日中の間に積もった雪が……。

何日も降り続けば毎日のようにこの作業が待っているわけで。これではうんざりするのも当然ですよね。

しかし一方で、ウィンタースポーツはし放題、雪解け水を使って作られるお酒やお米は美味しく、何より待ちわびた春が訪れ草花が芽吹く春の美しさは格別です。

「雪が降るというだけで、雪国を敬遠して欲しくない」と鈴木さんは言います。

ジョセササイズについて講義をする鈴木さん

鈴木
「辛い、面倒ばかりでなく、雪があるからこそ楽しいということを発信していきたいですね。会津だけのものにするつもりはないので、ぜひ雪国全体で使っていただきたいです。

ジョセササイズが雪国に来てもらうきっかけになってくれたら」

除雪のハードさだけでなく、雪国そのもののイメージを変えること。ジョセササイズの活動の先には、そんなビジョンがあります。

新たな田舎コンテンツの
可能性

現在は、協会が発足して3シーズン目を終えたところ。

活動が広まっていく間にGoogleの「イノベーション東北」と共同開発したブラウザアプリのリリースやLINEスタンプも販売されたほか、各地で講習会を開催してほしい、と声がかかることも増えてきました。

今年、ジョセササイズを取り入れた体験ツアーで西会津を訪れた人はなんと150人を超えたそう。交流人口が増え、地域が元気になることもまたジョセササイズの効果と言えるでしょう。

LINEスタンプのイラストは実際の会員がモチーフ

鈴木
ほんの下心で生まれた言葉がここまで広まるとは、今でも信じられないほど(笑)。人生が変わりましたね。

個人的にも誰かと積極的に繋がろう、何かやってみようと強く思うようになりましたし、“これは仕事にも活かせるな”と感じる気づきもたくさんありました」

これからもジョセササイズを通して、雪国の楽しさを伝えていきたいと話す鈴木さん。頭の中にはこんな野望もあるのだそう。

鈴木
「夏場の除草を“ジョソササイズ”、用水路のゴミを取り払う堰払いを“セキササイズ”など、なんでも応用できそうなんですよね。要は考え方ですから。

面白い田舎コンテンツが増えて、どんどん若い人が絡めるようになったらいいなと思っています」

駒沢女子大の学生さんも
毎年ジョセササイズに訪れています

何気ない暮らしの中にも、少し目線を変えてみるだけで思わぬヒントが見つかること。そして、ブレない世界観を持つことがより大きな共感を生むこと。

ジョセササイズ協会の活動は、雪国だけでなく、これから地方で何か新しい活動を始めようとする方々にとっても学びの多い取り組みなのではないでしょうか。

鈴木さんによると毎年稲刈りが終わり、初雪の便りが聞こえてくる10~11月から、会員たちが「ザワザワし始める」とのこと。どうやらみなさん、雪が降るのが待ち遠しくてたまらない様子です。

気になった方はぜひ一度今年の冬は西会津町へ。雪国の概念を変えられちゃってください!
レッツ、ジョセササイズ!

日本ジョセササイズ協会
http://jjxa.strikingly.com/

渡部あきこ

渡部あきこ

福島県出身のフリー編集者/ライター、利酒師。福島のお酒が好きすぎて数年前にUターン。趣味は居酒屋探訪です。カルチャー全般から旅、食、伝統文化まで幅広く執筆中。お仕事のご依頼はこちらまで。akiko.nabe@gmail.com
渡部あきこ

渡部あきこ

福島県出身のフリー編集者/ライター、利酒師。福島のお酒が好きすぎて数年前にUターン。趣味は居酒屋探訪です。カルチャー全般から旅、食、伝統文化まで幅広く執筆中。お仕事のご依頼はこちらまで。akiko.nabe@gmail.com