結婚式前日に起きた震災。1年の週末婚の結論は?

福島県の田村市滝根町で農業を営む夫の和之さんと震災の翌日に結婚式を挙げ、東京から移り住んだ稲福由梨さん。
夫婦で無農薬農業を実践しながら、2013年に地元農産物の加工施設“福福堂”を立ち上げました。

さらに「農家民宿」のオープンを目指すなど、福島の地で夢を追い続けています。

キラキラした目の男性と運命の出会い、結婚。
そこに「震災」という高いハードル。

福島県の中通り中部に位置する田村市滝根町で、農薬や化学肥料を一切使わず、手間と愛情を込めた農業を実践している稲福和之・由梨夫妻。
うるち米と黒米を田んぼで育て、さらにエゴマやブルーベリー、そして山ぶどうの栽培など、畑作にも力を入れ始めています。

自宅裏にある山ぶどう園から眺める自然豊かな風景

自宅裏にある山ぶどう園から眺める自然豊かな風景

農薬や化学肥料を一切使わないのは、作物が自然に育つ力を最大限に活かすため。

農薬や化学肥料を一切使わないのは、作物が自然に育つ力を最大限に活かすため。

加工品をつくるためにも力を入れているブルーベリーの栽培。

加工品をつくるためにも力を入れているブルーベリーの栽培。

夫婦で協力し合いながら働く稲福夫妻ですが、ここに至るまでには、二人の前にとてつもなく高いハードルが立ちはだかりました。

沖縄生まれ東京育ちで、NPO地球緑化センターの「緑のふるさと協力隊」として滝根町に派遣されてからそのまま移住し、無農薬・無化学肥料栽培で自給的農業をしていた和之さんと、東京生まれ東京育ちで管理栄養士として学校給食を作っていた由梨さんが出会ったのは、由梨さんが知人に誘われて参加した田植え体験ツアーでのこと。

由梨さんは滝根町の美しい自然と和之さんの人柄に惹かれて交際がスタートし、結婚を決意しますが、なんと結婚式の前日に東日本大震災が発生します。

由梨さん
田植え体験で主人に会った第一印象は、『すごく目がキラキラしている人』。
夢を追っている少年のようで、東京で生まれ育って働いていた私が今まで出会ったことがない人だったんです(笑)。
初めて訪れた滝根町の自然も素晴らしく、私もこういうところに住めたらいいなぁと思いました。
交際がスタートして、ほどなく結婚を決めて、東京から福島に移り住んで主人と一緒に暮らそうと、福島での就職先も決まっていたんです
生まれ育った東京から、結婚を機に福島県田村市滝根町に嫁いだ稲福由梨さん。

生まれ育った東京から、結婚を機に福島県田村市滝根町に嫁いだ稲福由梨さん。

ご主人の和之さん。「キラキラとした目」は今も健在です!

ご主人の和之さん。「キラキラとした目」は今も健在です!

福島で農業を続ける夫の姿に奮い立つ。
1年の週末婚から移住を決意!

震災翌日の結婚式は予定通り挙げたものの、福島での事故の影響と先の見えない不安から由梨さんの滝根町への移住はいったん凍結。
東京の実家から、週末に滝根町に通う新婚生活が始まります。

震災後、福島の農業は大きな打撃を受け、やむを得ず農業を辞めていく人も。
福島県産というだけで農作物は売れ残り、これから福島の農業はどうなってしまうのか、先の見えない不安が福島全体を襲っていました。

そんな状況の中、滝根町にそのまま残った和之さんは、すべての農作物の出荷をストップしたものの、土壌の放射能や空間線量を測定しながら、手探りで農業を続けていきます。

和之さん
あの時の自分を突き動かしていたのは、『やむを得ず農業を諦めていった仲間のためにも、ここで自分が諦めるわけにはいかない。ここからだ。』という思いだけでしたね

そんな和之さんと地域に残った仲間たちの姿をみて、由梨さんも奮い立ちました。
“週末婚”から1年が経ち、ようやくこの地で生活していけると確信を得て、決意をあらたに滝根町に移り住み、夫婦での生活をスタートさせたのです。

地元の大工さんと一緒に和之さんが内部をつくった稲福夫妻宅。 滝根町の美しい自然に溶け込んでいます!

地元の大工さんと一緒に和之さんが内部をつくった稲福夫妻宅。
滝根町の美しい自然に溶け込んでいます!

夫が妻の夢を支えると宣言!
次なる夢は体験型宿泊施設「農家民宿」

福島に移住した由梨さんは、当初は管理栄養士の資格を活かし、小学校に勤務していました。
しかし、移住して1年後の2013年に転機が訪れます。

余ったブルーベリーなどの相談を受けたことから、農産物の加工場を自宅の敷地内に建設。
国の復興支援策が充実してきた時期でもあり、国から資金援助などを受けることができ、タイミングよく業務用の設備を安く手に入れることができたのも追い風となりました。

 自宅の横に併設されている地元産農作物の加工場として建てられた“福福堂”


自宅の横に併設されている地元産農作物の加工場として建てられた“福福堂”

由梨さん
加工場の名前は“福島から福を届ける”という意味を込めて“福福堂”としました。
おいしいものを食べると幸せな気分になりますから、自分たちは食と農から幸せな気持ち、つまり “福”をお届けしていきます。
調べてみると“堂”には多くの人が集まる建物という意味もあるそうなので、将来的にいろんな人が集う場所にしていきたいとの想いも込めました。
最近は、農業体験を軸にジャムづくりや黒米を使ったお菓子づくり体験など、親子向けの講座も始めました。
桜の時期には黒米おはぎをつくる体験も開催しているんですよ
福福堂の主な商品。 左から黒米甘酒、黒米、ブルーベリー&ミックスジャム、エゴマ油、黒米うどん

福福堂の主な商品。
左から黒米甘酒、黒米、ブルーベリー&ミックスジャム、エゴマ油、黒米うどん

2016年4月からは、由梨さんも本格的に就農。さらに、由梨さんには大きな夢があります。

由梨さん
私のもうひとつの夢として、独身時代からずっと、自然が豊かな場所でペンションをやりたいと考えていたんです。
結婚前にすでに主人にもこの夢は伝えていて、『ここでその夢を叶えていいよ。俺、応援するよ』と受け止めてくれました

なんてカッコイイ和之さん!男前!!
由梨さんが震災というとてつもなく高いハードルを乗り越えて、福島に移住するのも納得してしまいます。

由梨さん
自分が農業に関わっていろんな出会いと経験をしたのと同じように、この場所でいろんな人に宿泊しながら農業を体験してもらいたい。
この農業の魅力を、もっと伝えていきたいと考えています
とってもカッコイイ夫の和之さんの支えもあり、農家民宿の開業を目指す由梨さん

とってもカッコイイ夫の和之さんの支えもあり、農家民宿の開業を目指す由梨さん

和之さんと滝根町と農業を愛し、加工施設を立ち上げる知識とパワーを持つ由梨さんなら、おいしい食事と素晴らしい農業体験ができる、唯一無二の農家民宿を作り上げるはず。

由梨さんの夢が実現することを待ち望みながら、一緒に応援していきましょう!

小林 弘和(こばやし ひろかず)

小林 弘和(こばやし ひろかず)

WEBディレクター/ライター・編集者/地域プロデューサー

WEB制作会社勤務時代に移住・交流を応援する官公庁系WEBメディアのサイトを運用。北海道から鹿児島まで様々な地域で活躍する移住者や取り組みを取材。現在、企業サイトや自治体サイト制作のほか、地元でもある茨城県常陸太田市里美地区の地域WEBメディアを運営。その他、野外映画などの地域イベントも企画。東京と茨城の2拠点で活動中。
小林 弘和(こばやし ひろかず)

小林 弘和(こばやし ひろかず)

WEBディレクター/ライター・編集者/地域プロデューサー

WEB制作会社勤務時代に移住・交流を応援する官公庁系WEBメディアのサイトを運用。北海道から鹿児島まで様々な地域で活躍する移住者や取り組みを取材。現在、企業サイトや自治体サイト制作のほか、地元でもある茨城県常陸太田市里美地区の地域WEBメディアを運営。その他、野外映画などの地域イベントも企画。東京と茨城の2拠点で活動中。