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“何にもない”から幸せを感じることのできる島「久賀島」

私は鹿児島県の離島で生まれ育った。
地元を離れるまでは島の外の世界への興味や憧れが大きかったが、大学進学と同時に上京してから、住んでいたときには気付かなかったよさに改めて気づき、地元に対しての興味が強くなった。
今は、地元に限らず地方の地域活性や観光まちづくりに興味がある。

地元以外の離島と関わったことがないため、今回長崎県の離島である久賀島でのまち冒険を通して何か面白い発見ができるのでは、と思い、参加した。

地元の人から見る久賀島の魅力とは?

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どの地域にも、その地特有の魅力がある。
私は、例えば郷土料理や伝統芸能、伝統工芸品など、地元の人が誇れる具体的な何かがどの地域にも存在しているものだと考えていた。

地元の方が誇れる久賀島の魅力とは何だろう。
島のさまざまな方とのインタビューを通して、このことを伺ってみた。
すると、「人」「自然」など抽象的な答えが多い印象であった。
また、「何もない」と答える人もいた。

私は最初、久賀島にしかない具体的な事物を予想していたため、「人」や「自然」など、どこにでもある(いる)ものを一番の魅力とすることに少し違和感をもった。

しかし、久賀で診療所を営まれている黒須さんご夫妻にお話を伺ったとき、これらの答えの真意がわかった気がした。

「“何もない”が一番の贅沢」

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20年以上アフリカで医療の仕事に携わったのち、昨年久賀島にやって来られたという黒須ご夫妻。
診療所の先生とその奥さんということもあり、地元の方々と接する機会が多く、患者さんやご近所の方が新鮮な魚介や野菜をわけてくれることがよくあるそうだ。

そういったお話をしている最中にも、近所の方が新鮮な牡蠣をおすそわけしに訪れた。
島の人のあたたかさを垣間見ることができた瞬間であった。
また黒須さんは、犬の散歩をする道のりだけでも、昨日まで蕾だった花が咲いていることや、季節によって風景が変わっていく様子など、日々変化を見つけて幸せを感じるのだそう。

そんな黒須さんがおっしゃった、「“何にもない”が一番の贅沢」という言葉は、私にとってとても印象に残っている。
“何もない”のかもしれない。しかし、だからこそ着飾っていないありのままの自然の良さを感じることができるのだと実感した。

黒須さんだけでなく、民泊させて頂いたお宅の宮本さんも、「同じ場所から同じ風景を見ても、毎日違った表情をしているから見ていて楽しい」とおっしゃっていた。

自然と共生している久賀島の人々は、日々自然の中で新しいことや変化を見つけて幸福を感じている。
このことこそが久賀島の魅力であり、島の人に聞いても単純に言葉では説明し難いもので、久賀島に実際に行ってみたから気付くことができたと思う。

私にとって、この視点に出会えたのは大きなことだった。
なぜなら、私が地元に住んでいたときは周りに自然があるのは当たり前のことで特に気に留めようとせず、地元を離れて初めてその良さに気付くことができたからだ。
日常として常に自然と暮らしている環境でその良さに気が付ける久賀島の人々の感性には驚いし、とても素敵だと感じた。

気付いたこととこれから

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人口減少と高齢化が著しい久賀島。
こんなに人も自然も素晴らしい島だから、島外から観光客がたくさん来れば活性化するのでは?
しかし、そこには様々な問題があることを、島の観光ガイドをされている坂谷さんにお話しを伺ったときに学んだ。
まず、久賀島は経済活動をするポイントや労働力が非常に少ない現状にあり、観光客が来たとしても島に経済的利益が回らない。
それに加えて、久賀島の一番の魅力である「人」や「自然」。坂谷さんはツアーガイドとして、久賀島の特徴や歴史を観光客に伝える活動をされているが、島の「人」や「自然」の素晴らしさを伝えるのは単純なことではないそうだ。

確かにこれらの魅力は口頭だけで伝えるのは難しいと思う。
私は、二日間という短期間であったが、久賀島での暮らしを地元の方との交流を通して実際に体験してみたから、その良さがなんとなく理解できたと感じている。
経済的利益が島に回る工夫を施しつつ、観光客と地元の人が交流する機会を増やして体験型で久賀島を観光する方法がより効果的なのではないかと考えた。

これは、久賀島に限らず、私の地元や他の地方にも通じることだと思う。
これからは、この気付きを活かして地方の体験型観光についてもっと学んでいきたい。

また、大学に入学してから様々な地方出身の方と出会う機会が増えたが、それぞれの地元の話をすると「うちの地元は本当に何もないよ」という人が多くいる。

今回のまち冒険で、“何もない”ような場所に隠れる魅力を引き出す視点など、これから地域活性や観光まちづくりについて考えていく上での重要な考え方を学ぶことができた。
私は、これからいろんな地域に実際に行って、その“何にもない”という言葉に隠れているその地方の魅力を発見していきたい。

屋 優美

屋 優美

埼玉大学教養学部教養学科1年

生まれも育ちも離島。趣味はピアノ。