「家が飛ぶ」「買い物はネット」島暮らしの女性達に聞く“離島あるある”

お昼はコンビニでお弁当を買って急いでかき込み、夜になると充電切れでベッドに倒れこむ。

こんな毎日の中で、いつ朝になっていつ夜がやってきたのか、私たちはアラームの音や時計の針にせかされて知るのが、当たり前になっているかもしれません。

この世界に、それも日本に、全く別の生活があるというのを、想像してみたことはありますか?

離島の暮らしってどんな感じ?「離島女子会」で教えてもらおう

鹿児島県、奄美大島のさらに南に、加計呂麻(かけろま)島という島があります。

©三谷晶子

海岸沿いにぐるりと30の集落が点在しており、人口は1400人未満の、山に覆われた小さな島です。

東京よりも韓国や台湾のほうが近い!

島の魅力に惹かれて移住したという人も多いそうですが、いざ住んでみるとどんな感じなの? 実際の島の暮らしって……? と、疑問に思うことも多いですよね。

ということで、この加計呂麻島に住む女性たちにお集まりいただき、「島暮らしのリアル」を座談会形式で聞いてみました。題して「離島女子会」!

島には、移住した女性が立ち上げたアパレルブランドもあるとのこと。島でアパレル? と興味津々。そこについてもお聞きしました。

飛行機・バス・船を乗り継いでたどり着いた「別世界」

加計呂麻島へのアクセスは、隣の奄美大島にある空港を利用するのが最速ルート。

東京から奄美大島までは飛行機で約2時間。空港のロビーに到着すると、カラッと晴れた暖かい気候が迎えてくれます。

 

奄美空港からはバスを乗り継いで計2時間、島を北から南へと縦断し、港へ向かいます。

市街地をぬけると、窓からの景色はひたすら山と海!バスの揺れが心地よく、気づけば夢の中へ……

 

日が落ち始めた頃、奄美大島南部の古仁屋(こにや)港に到着。そこには加計呂麻島へ向かう大きなフェリーが繋がれていました。

この古仁屋は、加計呂麻島に住む人にとって「最寄りの街」となります。

今回はフェリーではなく海上タクシー(小さな船)で加計呂麻島へ渡りました。

 

夕焼け空に包まれながら薄暗くなってきた海の向こう、だんだんと小さくなる陸地を眺めていると、どこか遠くの別世界へ連れて行かれるような気分に……。

 

そしてついに! 東京を飛び立ってから約5時間半、加計呂麻島へと到着です。
 

今回、離島女子会を催したのは、諸鈍(しょどん)という島で1番大きな集落。映画『男はつらいよ』最終作のロケ地としても知られています。

【女子会メンバー】

三谷さん
東京出身。移住前は東京でライター・小説家として活動し、著作が2冊。現在も執筆業や文章講座の講師を継続しながら、2015年にアパレルブランドILAND identity(アイランドアイデンティティ)を立ち上げプロデュースしている。

武さん
東京出身。親と旅行で加計呂麻島に来た際に島の男性と恋に落ち、遠距離恋愛を経て移住。現在は旦那さんの実家が営むペンションを手伝いながら、歯科衛生士の資格を活かして働いている。

谷さん
大阪出身。ヨットに乗って南を目指していた際に風待ちで加計呂麻の港に入り、その数日後に長男がお腹にいることが判明し、そのまま島で暮らし始める。現在は4人の子供を育てながら保育所の補助やペンションの部屋掃除、アクセサリーを作る仕事をしている。

島田さん
愛知出身。アパレル販売の仕事を辞めた後、加計呂麻にて短期滞在の仕事をしたのをきっかけに、その後何度も島を訪れるようになり移住。現在は両親も加計呂麻島に移住してきており、今年の4月からは飲食店を営んでいる。

お店が見当たらないけど……買い物ってどうしてるの?

── 実は先ほど、この集落で唯一の商店へ行ってきたのですが……。アイスやお菓子はあっても食材が見当たりませんでした。皆さん、普段はどこでお買い物しているんですか?

島で1番大きい諸鈍(しょどん)集落で唯一の商店。船で買いに行くと溶けてしまうアイスも、ここで購入すれば安心

谷さん船に乗って古仁屋(隣の奄美大島にある街)まで買い出しに行くか、ネットスーパーを利用することが多いかな。服などは通販で。

三谷さんネットスーパーもすぐには届かないから、日用品は買いだめが大事だね。

移住したての頃、電球が切れちゃったんだけど海が荒れてて船が出ないから買いに行けなくて。しばらくヘッドライト(頭につけるライト)で暮らしてた(笑)

武さん慣れてくると島での暮らし方も上手になるよね。ネットスーパーができてからは、すごく便利になった方だと思うけど。

島田さん最近だよね。ここ数年じゃない?

三谷さん子どもや両親の分の買い物をする人は、船で買い出しに行くとスゴイ量になるからね。

谷さん私は子供2人かかえて買い出しに行ってたよ。リュック背負って腕にいっぱい買い物袋ぶら下げて、大変だったな。今はほんとに便利!

── ネットスーパー、偉大すぎですね!

ぶっちゃけ、遊ぶところはあるの?

── 皆さん、お休みの日は何をして過ごしているんでしょうか?

三谷さん暖かい季節なら海に行ってるかな。スリ浜って海岸がここから近くて、シュノーケリングにもぴったりなスポットなんだけど、そこに行くと誰かしら知り合いに会えるよね。

スリ浜にあるテーブル。お休みの日は皆さんよくここでくつろいでいるのだそう。おしゃれ!

武さん海岸で貝殻拾ったり、釣りしたり、ドライブしたり……。

島田さんたまには船で古仁屋まで行ってランチとか?

三谷さんたまに行くと超楽しい!ってなるよね。

島田さん家からいろいろ持ち寄ってきてピクニックみたいにするのも楽しい

谷さんランチしてそのまま外で飲み始めて、結局夜までとか。

三谷さん家にいると西日が暑いからね。涼しくなるまで外にシート敷いて、夕日を眺めながら過ごすのがいいよね。

── 都心とはまったく違う時間の流れを感じる……! すごく贅沢かも!

この日の取材後も芝生の上にシートを敷き、お話しながら夕日が沈むのを見届けました

島にある伝統的な家は、飛ぶ。

── この島のお家って、なんだか一般的な造りとは違いますね。

武さん伝統的な島のお家はお風呂が離れで別になってるから、いったん外に出ないといけないんだよ。

三谷さん火を使うところは離して作ってあるんだよね。お風呂も火を焚いて沸かす五右衛門風呂だったから別になってるの。

今はボイラーがあるし、シャワーも使えるけどね。外にお風呂があると、海から帰ってそのまま入れるところが便利。

谷さん確かに! でも台風が来たら入れないんだよね。

島田さんちなみにうちは玄関がなくて

── え?!

島田さん大きい窓が入口なの。家を運んだらしいから、移動する前は玄関があったのかもしれないけど。

── い、家を運んだんですか?!

島田さんそうそう、前に台風で飛んだの。こっちの家ってみんな石の上に乗っかってるだけでしょ。

だからそのままの形で、他の場所に飛んでいっちゃったみたい。みんなで持ち上げて元の位置に運んだんだって。

確かに島ではどの家も、石の上に乗っかっているだけ……

三谷さんそういえば私の家も、そんな話を聞いたことがある気がする!

谷さんそれも知恵だよね。バラバラに壊れるよりいいから、って。

── 家ってそんなによく飛ぶものなんですね……。スーパーがないことよりも衝撃的です。

やっぱり気になる恋のお話! 出会いってあるの?

── 気になるのが、島の恋愛事情。人口が少ないとやっぱり出会いも限られてしまうのでしょうか?

島田さん確かに、あんまり若い島の人はいないかな。

三谷さん20~30代で島生まれの人なんて、10人もいないかも。

谷さん恋愛に向いてる島とは言いにくいかもね~。

武さん私は島の人と結婚したから、ちょっと例外かな。

島田さんうちの旦那も島の人だけどね。

谷さんそもそも島に来ると、恋愛対象の男性に何を求めるかが都会にいるときと変わってくるよね。「DIYできる」とか「虫の退治ができる」とかの方が重要なの(笑)。

武さんそういえば私も夫の、都会にいなさそうなところに惹かれたかな。無人島に行っても一緒に生きていけそう! って(笑)。

三谷さん「有名企業で役職についてる」とか、この島に来たら肩書なんて何の意味もなくなっちゃうからね。

── 肩書よりも、無人島で生きていけるかどうか。それはそれで厳しいのかも……。

島暮らし、困ることはもちろんある

── 恋愛の出会いが少ないことの他に、この島の暮らしで不便だと思うことはありますか?

武さんやっぱり病院がないことかな。具合が悪くても船に乗らなきゃいけないし……。一番近くても古仁屋(隣の奄美大島にある街)まで行かないといけないの。

島田さん古仁屋に行っても診てほしい科の先生が常駐しているわけじゃないから、結局もっと大きい街まで移動することもあるし、大がかりな手術や出産も古仁屋ではできないよね。

三谷さん私の場合は仕事柄、インターネットの回線が遅いのは不便かな。島にも電波塔はあるんだけど、なんせ山だらけだから。

大きい画像データのやりとりは船で古仁屋まで渡ってやってる(笑)。古仁屋での滞在時間を作業時間と決めればメリハリはつくけどね。

谷さん子供の習い事も古仁屋まで行かなきゃいけないね。船代もかかるし、付き添いが必要なら仕事のスケジュールも合わせないといけない。

── やっぱり、島暮らしは「いいことずくめでおすすめです!」とはいえない部分もあるんですね。

それでもやっぱり、島は最高

── では逆に、加計呂麻島の魅力を教えてください!

座談会を開催させていただいた、島田さんのお店のテラス席。目の前に海があって、とっても贅沢!

三谷さん人も景色も、柔らかくて優しい雰囲気の島だよね。他にもいろんな島に行ったんだけど、住みたいって感じるのは加計呂麻だった。

島田さん帰ってくるとホッとするよね。落ち着く場所。

武さんお隣に住んでいる島のお年寄りの方が、突然玄関に野菜を置いておいてくれたりする温かさにも癒されるな。

魚を持って行ったら次の日に野菜をお返しでくれるっていう、物々交換みたいなのが始まるの。

谷さんみんなこの島が好きっていう共通点があるし、移住してきた人たち同士でもその時点ですでに気が合うよね。
 

 
到着してすぐは、スーパーすらない加計呂麻島の予想以上の不便さに驚いていたはずが、気づけばのんびりとした空気が流れるこの島の暮らしに、なんだか憧れてきました。

観光客の「お土産がない」という声に応えたくて

── 三谷さんは、東京でライターをしていたんですよね。なぜ加計呂麻島に?

三谷さん「加計呂麻島にある塩工房で、1か月ほど滞在しながら手伝いをしてくれる人を探している」という情報を見たことが始まりでした。

ちょうど自分の人生について悩み始めていたときで。「南の島で1カ月ゆっくり考えてみようかな」とお手伝いに来てみたんです。

そうしたら、私がしたかった暮らしはこれだ!って、気づいてしまって。そのまま移住することを決めました。

── すごい決断力! ブランドを立ち上げようと思ったきっかけは?

©野々村奈緒美

ILAND identity(アイランドアイデンティティ)

移住後、三谷さんが立ち上げたアパレルブランド。プリントTシャツやトートバッグ、シュシュやブレスレットなどのアイテムを展開する。
http://iland-identity.jp/

三谷さんイラストレーターの山崎ひかりさんという方が加計呂麻に来たとき、絵日記に描いていたイラストがすごくかわいくて、個人的にTシャツにさせてもらったんです。

それを着ていたら島の人から「かわいいから私も欲しい!」って言ってもらえて、もしかして需要があるのかも……と、思い始めました。

©野々村奈緒美

それぞれの集落の雰囲気が、山崎ひかりさんが描くイラストで表現されているという。とてもかわいらしいTシャツ!(左から諸鈍・徳浜・大島海峡)

── 島のお土産売り場にも、このブランドのアイテムが並んでいましたよね。

三谷さんそうなんです。加計呂麻にも若い女性の観光客が増えたんですけど、「お土産を買って帰りたいのに、欲しいと思えるものがない」という声を聞くことがあって。

島にはアクセサリー作りや染め物ができる人がいるので、お土産にもなるようなアイテムを一緒に作れないかな、と考えたのもきっかけの1つでした。

©野々村奈緒美

こちらのバッグチャームは、女子会にも参加してくれた谷さんが手作りしたものだそう。バッグもアクセサリーもカジュアルで島っぽいのが素敵

この島でしか作れない、この島でしか買えないものを

── ブランドの名前にはどんな由来があるのですか?
ISLAND(アイランド)」じゃなくて「ILAND」になっていますよね。

三谷さん「私の島」「私の世界」「同一性」「個性」「国、民族、ある特定集団の帰属意識」「特定のある人そのものであること」「あるものがそれとして存在すること」という意味を持たせています。

アイランドの頭文字がISではなくIなのも「私」という部分を強調するためです。

── では、このブランドを加計呂麻島という場所でやることには何かこだわりがありますか?

©三谷晶子

三谷さん私がブランドを通じて表現したいテーマに、加計呂麻は欠かせないと思っています。この島の人たちの思いやりとか優しさとか、そういった雰囲気がテーマにぴったりなんですよ。

── たとえば?

三谷さん私は、この島に来たことで価値観がガラッと変わって、とても気持ちが楽になったんです。

別に無理して頑張りすぎなくてもいいんだ、肩の力を抜いて、こういう暮らしをするのも素敵なんだ、って思えるようになりましたね。

都会的な「美しい女性像」の枠にとらわれず、それぞれ自然体で輝いている島の女性たちをモデルに起用しているのも、そのためです。

── 確かにアイテムからも、どこか落ち着くような、とても優しい雰囲気が感じられます。

誰かに背中を押されて「やってみようかな」って

── これから新たにやってみたいことなどありましたら教えてください!

三谷さんアパレルブランドって普通、季節ごとに新作をどんどん発表していきますよね。だから私も、ガツガツ作らなきゃ! って思っていた時期もあります。

でも、よく考えたら「私、ガツガツするためにここに来たわけじゃないし……」って。

今、ちょうど新作を作ったりしているんですけど、これも誰かに背中を押してもらうような感じで、なりゆきで実現しました。

Tシャツのデザインを増やすのもいいな。とか、メンズやキッズのサイズも展開してみようかな。とかは考えています。まあこれもその時が来たら、ですね。

── ありがとうございました!

 

今回の滞在中、離島女子会に参加されたみなさんには、取材時以外でも一緒にご飯を食べてお話をしたり、空港まで車で送ってもらったりと大変親切にしていただきました。

まるで地元に帰って来たかのような気持ちになる、懐かしくて温かい人々との交流。この島が「ホッとする」と言われていた理由が、何だかわかったような気がします。

そんな素敵な加計呂麻の女性たちがつくるブランド『ILAND identity(アイランドアイデンティティ)』。ぜひ、応援してください。

取材・編集/オルカ+プレスラボ