「魚臭に強いハンドソープ」を試したくて釣りに出かけた

ふと思う。

なぜ魚類はあんなにも、ヌルンヌルンしているのだろうか?
そして、なぜ“サカナっぽいニオイ”を発しているのだろうか?

あんなにヌルンヌルニュルニュルンヌルンッポンしていなければ、猫ばりに愛されていた可能性があるし、サカナっぽいニオイももう少し抑えられていれば、犬ばりにワシャワシャされていたのかもしれない。

食べ物としてみても、やはり魚は米や肉に比べてニオイやヌメリがなかなか屈強であるし、落ちにくい。

卓上に出てきた〆鯖に「わたし結構、サバサバしてるほうだから!」と言われても、食べてみればそれなりにしつこいニオイがするものである。

つまり、魚類というのは、ニオイやヌメリによるハードルが無駄に高い生き物なのだと思う。

そして、これらが解決できれば、我々人類はもっと魚類に対して好意的に接することができ、釣りをするにも、料理をするにも、もっと身近でハッピーでピースフルなものになるのではないか。(とはいえ、乱獲は反対ですが)
 

そんな僕の疑問を鮮やかに解決してくれたのが、カズワタベさんが社長を務める企業・ウミーベ株式会社だ。

ウミーベは、オンシーズンには月間200万PVを集める釣り情報サイト「ツリホウ(釣報)」や、釣り人向けのコミュニティサービス「ツリバカメラ」などをリリースし、ITやデザインを活用して釣りをより楽しめるようにすることに取り組んでいるIT企業だが、同社は2017年より、魚臭につよいハンドソープ「FISHSOAP(フィッシュソープ)」を販売し始めた。

果たしてフィッシュソープは、僕と魚の距離をどれだけ縮めてくれるのか。
そもそも、フィッシュソープはどのようにして生まれたものなのか。

話を聞くため、福岡に飛んだ。

向かった先は、海の上にある釣り堀

羽田空港から飛行機で、福岡へ。
空港で待っていたカズワタベさんの車に乗せてもらい、1時間ほど走らせると、神湊港(こうのみなとこう)に着いた。
 

カズワタベ今回は、「大島」という離島にある海上釣り堀に行こうと思っています。

── 離島!? 海上釣り掘!? てっきり海釣り体験ができるかと思ってました。

カズワタベ沖に出て釣るのも楽しいんですけど、冬の日本海は荒れて船を出せない日も多いんですよ。それに釣れないと、記事が成り立たないでしょ?

── 仰る通りですね。

配慮の鬼。さすがCEOである

「釣り掘なんてズルいじゃないか!」とも思ったが、もしも1匹も釣れなければ、魚のニオイもヌメリもあったものではない。我々には、手段を選んでいる余裕などないのだ。
 

釣り掘がある離島・大島までは、海上タクシーに乗って移動した。
フェリーも出ているので、どちらでも移動可能だ。

たまたま乗った海上バスに、「スラムダンク」の井上雄彦先生のサインがあった。

「めちゃくちゃ釣れそうな予感がする!」とはしゃいだが、ハッキリ言って「井上先生」と「釣り」はまったく関係がない。
 

そんなわけで、「大島」に到着。

面積7.45キロ平米。静かで小さな島を談笑しながら歩く。流れている時間ものんびりしているように感じられた。
 

猫も見受けられた。いかにもビュー数を稼ぎそうな猫なのでこにアップしておく。
 

そして、釣り掘を所持する「うみんぐ大島」に到着。
 

簡単な説明を受けてライフジャケットを羽織ったら、いよいよ釣り開始である。
 

ちなみにここでは「マダイ」や「ヤズ」、「シマアジ」などが取れるらしい。

エサは、ねり餌とイワシの2種類。見るからに生臭そうであるが、フィッシュソープがある我々に怖いものはない。生臭 is LOVE.さっさと触らせてくれ。
 

ほぼほぼ初心者に付き、店員さんからエサの付け方を習う。
 

その間も我慢しきれず釣りを始めるカズワタベさん。表情がさっきまでと全く違う。
 

のんびり準備していると、さっそくヒットした模様。

おおおお。めちゃくちゃ暴れるイキのいいやつ!

記念すべき一匹目は、マダイ! これは期待できる。

「ちょっと小ぶりですけど、まずは1匹目」。
うしろでぼんやりと映っている筆者が寂しい。

「とりあえずやってみる」でスタートした新製品フィッシュソープ

無事にウキを浮かべることができたので、ここからは釣りを楽しみながら、ウミーベが開発したフィッシュソープについての話を聞く。

── カズワタベさんが創業したウミーベは、釣り人向けのコミュニティサービス「ツリバカメラ」と、釣り情報サイト「ツリホウ(釣報)」がメインの事業ですよね。

カズワタベそうですね。2014年の創業前からツリバカメラは頭の中に浮かんでいたんですけど、開発に時間がかかったのでリリースは「ツリホウ(釣報)」が先でした。数ヶ月遅れて「ツリバカメラ」のリリースですね。

── 両方ともWeb上のサービスですし、IT企業がフィッシュソープというリアルの製品を作るって面白いなあと思いました。事業の三本目の柱としてフィッシュソープを選んだ理由は何ですか?

カズワタベ柱というよりは、サイドプロジェクトの意味合いが強いんです。将来的にはウェブだけじゃなくてリアルのプロダクトを本格的にやっていく構想はあるんですけど、そのためのノウハウが社内になかったので、知見を得るために作った側面があります。

── え、じゃあ実験的な商品だったってことですか!?

カズワタベウェブのアプリやメディアの運営してても「在庫管理」とか「物流」といった部分の理解が身に着かないんですよね。

社内にノウハウを貯めたかったし、「単価が安いものならリスクも低いだろうし、一回やってみよっか」といったスタートでした。

── すごい。「一発当ててやろう!」とか、そういう野心はなかったんですか?

カズワタベああ、「大成功したらいいな」とは思っていますけど、やる前からわかっていたら、みんなやっていますからね。

とりあえずは手を動かしてみて、わからないことやできないことが出てくるたび、学んでいったほうが早いと思ってます。

── 真理だ……。何事にも当てはまりそうな気がしました……。

プロダクト作りは「しっかりしたコンセプト」+「工場のノウハウ」で作る!

スタート10分。釣れない僕。

── 現在、フィッシュソープの取扱店は全国に200店舗あると聞きました。これまでプロダクトを作ったことのない会社がどうやって製品を作って、広げていったんですか?

カズワタベ「OEM」と言われる、製造メーカーと連携して立ち上げる方法を取りました。化粧品とか健康食品はかなりの大手でなければ自社工場を持てないので、OEMで製造するのが一般的なんですよ。

成分などについての知見はOEMメーカーさんの方があるので、いろいろ教えてもらいながら作っていきました

── となると、カズワタベさんの会社は、フィッシュソープのどの部分を作ったんですか?

カズワタベコンセプトとデザインです。「魚のニオイが落ちるハンドソープを作りたいんです!」と伝えると、OEM先の工場の方はいろんなノウハウを持っているから、どんどん提案してくれるんですよ。

── そうか。コンセプトさえハッキリさせれば、そこに見合った機能や品質を工場と目指していくわけですね。

── フィッシュソープの使用感を読んだら、スクラブが入っていて洗い心地も良いと聞きました。

カズワタベあれも工場がいろいろと模索してくれたんですが、最初に試したときには、今の製品よりももう少しザラザラしたスクラブだったんです。

それだと洗い心地があまり良くなかったから、今のマンナン素材(コンニャクの成分)のものに変えました。洗い心地、めちゃくちゃいいですよ。

── 製品化するまで、どのくらいテストするんですか?

カズワタベ実際に魚を釣ったり捌いたりしてのテストはスタッフで何回も行いましたね。工場とのサンプルのやり取りは2~3回かな?

── あれ、意外と少ない。そんなもんでできるんですか?

カズワタベ製品化したものについては、最初のサンプルから臭いへの効果はかなり良かったんです。なので香りや洗い心地の調整が主でしたね。あと、それを数社とやり取りしたり。

── なるほどそういうことか! いろんな会社と話を進めるなかで、より理想的なものを作れるところにお願いするんですね。

カズワタベそうですね。

話が盛り上がってきたところで釣れた。なんとも間の悪い釣り人である。

リリースしたらTwitterのトレンドに入るほど話題に

── 僕がフィッシュソープの存在を知ったのは、たぶんTwitterでトレンドに入っていたからなんです。釣り関連の製品でそんなに話題になることって、あまりないんじゃないですか?

カズワタベリリースした日は、ずっとトレンドに入っていましたね。たしかiPhoneXの発売日とかで、ずっと一緒にトレンドに並んでいました(笑)

── おお、一日だけ、アップルと並んだんじゃないですか?

カズワタベ業績で並んでほしいんですけどね(笑)。でも、トレンドに入ったおかげで、リリース初日から問い合わせも多くて、そこはうれしかったです。
 

── プロダクトを出すと、ツリホウなどのメディアでもガンガンアピールできますし、各サービスで連動が効くのもよさそうですよね。

カズワタベそうですね。あとは、これまでウミーベは「ウェブだけの会社」って認知のされ方をしていたのですが、今回フィッシュソープが大型の釣具店に置かれたことで、認知のされ方がちょっと変わったと思っています。

── そうか、「メディアの会社だ」って見る人もいれば、「プロダクトの会社」って人もいて、とくにWebとは馴染みにくい釣り業界で言えば、リアルのプロダクトを出している会社の方が信頼は得られそうですもんね。
 

一匹釣れると、ガシガシ釣れる。マダイラッシュである。

カズワタベ「釣り」がリアルのアクティビティである以上は、ウェブが解決できることにも限界がありますから、こうしてプロダクトを出せたことは思ったより効果があったと思います。

── Web上だけでなく、リアルで釣りをやさしくしていかないといけないんですね。

カズワタベウェブだけだといずれサービスの手が届かない部分が出てきちゃうから、それも解決しなきゃいけないなって。うちの今の組織体制の資金力でできるものを考えた結果が、ハンドソープだったんです。

── やたらと原料や仕入れ値が高いプロダクトで在庫がめっちゃ出たときの恐怖はありますもんね……。

カズワタベ今でも在庫はあるんですけど、ハンドソープならある程度は知れているので、そこは選択肢として正しかったかなと思っています。これが釣具やアパレルとかだったらもっと大変ですし。

── でも、いつかはもっと別の商品やプロダクトもチャレンジしていくんですよね?

カズワタベはい! まだ言えないけれど、考えてるものもあります!

── それを楽しみに待とうと思います。ありがとうございました!

実践! フィッシュソープ!!

一通り話を聞き終えたところで、また本格的に釣りを再開。
 

エサを変えたら、大きな引き。

めちゃくちゃ活きのいいヤズをゲット。こんなデカい魚、釣ったことなかった。
 

続いてカズワタベさんもヒット。

デカいデカイ。

ご満悦。メチャクチャ元気なやつでした。こんなの野生で釣ったら絶対興奮するだろうな。
 

その後もマダイは入れ食い状態。

最後にはふたり同時にヒットして

見事に釣り上げた。これだけ釣れたら、さすがに楽しい。釣り掘はストレスなくていいな。
 

と、いうことで完全に魚臭に身を包んだし、ヌルッヌルのニュッルニュルになった今、満を持してフィッシュソープを試してみたい
 

手がヌルヌルしていても開きやすいキャップに、清潔なチューブ型。適量を手に取り、

ゴシゴシゴシゴシ~~!!

スクラブの心地よいザラつき感がヌメリを落とし、ほんのり泡立つ。
 

水で流すと、匂いを嗅いでみる。

「どれどれ……」
 

「おおーー! 本当にニオイしないぞ、これ!!!!」

「でしょー? 大抵の魚や餌には効くから!」と、満足そうに答えるカズワタベさん。

たしかにめちゃくちゃニオイが落ちた。むしろなんで今までなかったんだ? と疑問に思えるほどの品質。魚を捌くのは家庭でも見かける光景だし、釣り人以外にも馴染むプロダクトだと思った。

おわりに

こうして福岡で釣りをするロケは無事に終わりを迎えた。
結果、マダイを10匹弱釣り上げ、ヤズまで2匹釣って、超大漁となった。

最後に、ウミーベとカズワタベさんの今後について聞いてみた。
 

── 今後、ウミーベはどのようなことを仕掛けていくつもりなんですか?

カズワタベ基本的には、会社のビジョンである「釣りを、やさしく。」の実践に尽きます。

「釣り」という遊びはまだ初心者にはハードルが高くて、ちょっとマニアックなものになってしまっている。それをポップにしていくというか、敷居を下げていくのがウミーベの役割だと思っています。

── では、企業の社長ではなく個人として、将来に向けて考えていることはありますか?

カズワタベああー……。

楽しく生きたいっすね?

── ゆるい(笑)

カズワタベ冗談抜きで、楽しく生きている以上に勝ち組なことって、ないなあと思うんですよ。
お金をたくさん稼いでいるのに不幸そうな人もいっぱいいますしね。

── お金だけでは人は幸せにならないんでしょうね。

カズワタベそう。だから楽しく生きられるように、お金を稼ぐこと以外にも、いろいろやっていきたいと思っています。

── これからが楽しみです。ありがとうございました!
 

「企業の代表」というポジションを想像するとひたすらビジネスに固執するイメージがあるが、カズワタベさんは個人の人生を謳歌する手段のひとつとして会社経営を選んでいるようで、そのスタンスに深く共感できた。

「IT企業が実製品をつくる」という一見リスキーな施策にも、“やってみなきゃわからないから”と行動に移せるフットワークの軽さたるや、真似したくてもなかなかできないもの。広い視野と高い視座から生まれたフィッシュソープとウミーベを、これからも応援していきたい。

※ここだけの話だが、釣った魚は全て持ちかえる必要があり、そのお金はすべて僕の原稿料から出されることになった。また、マダイは捌いてくれる料亭に寄贈して、福岡に住む友人たちを集めて一晩で食べた。いろいろ最高だったが、いろいろ散財することにもなった。いい思い出と捉えたい。

取材・編集/カツセマサヒコ+プレスラボ
写真/小金丸和晃