【本が勝手に増える】町はずれにある無人の古本屋さん「BOOK ROAD」

東京都・三鷹には無人の本屋があるという。

畑などで野菜の無人販売を見かけることはありますね。
でも、……本? 本を無人で……? 無人の本屋さんと聞いて、筆者がまず思い浮かべたのは店員がオートメーション化されたSFな本屋でした。

いやいやいやいやいや、もしかしたらずらっと本の販売機が並んでいるのかもしれない。それとも……?

いてもたってもいられず、現地に行ってみることに!

最寄は三鷹駅北口

その本屋さんは、三鷹駅の北口から10分ほど歩いたところにあるんだとか。

お店まではちょっと歩くけど、散歩にもぴったり

なつかしさを感じさせる昔ながらのお店と、新しいお店が入り交じる「三谷商店街」を進んでいくと……ありました!

こちらが無人古本屋「BOOK ROAD」。
看板なども出ていないので、知らないと通り過ぎてしまうかも。

一見するとお店なのかどうかもわかりませんが、正真正銘、無人古本屋「BOOK ROAD」です。

無人ってどういうこと? 本の精算ってどうやればいいの? そんな疑問を解決するべく、さっそく入店!

多種多様な本が並ぶ無人本屋「BOOK ROAD」

お店の面積は決して広いわけではなく、むしろ2坪(約4畳)ほどというこぢんまりとしたお店です。自分と、あと一人ぐらい入ると窮屈に感じてしまいそうです。

棚にはさまざまなジャンルの本がたくさん並びます。訪問時はマーケティングやデザインや手芸、それにビジネス書などがありましたが、その時々によって並ぶ商品は変化するそう。

いつ行っても、意外な一冊に出合うことができる。それが「BOOK ROAD」なんです。

「無人本屋」での斬新すぎる精算法

こちらが店内の壁に貼られた購入方法の案内。「おうちへかえる」までが買い物!

では、そんな無人本屋での精算はどのように行えばいいのでしょうか。

気になる一冊を見つけましたので、実際に購入してみたいと思います。

<裏側の値札をチェック>
まず、本の裏側に貼ってある値札を探します。こちらは500円の商品。

これをどうやって支払うのかというと……

ガチャガチャ!
小さい頃にお目当てのモノが出るまで回したという人も多い、あのガチャガチャです。

なんと、このお店の店番はガチャガチャ。500円なので、下のガチャを1回回します(上は300円用)。

本の値段は300円、500円、800円、1000円の4種類とシンプルな構成

ガチャガチャはそれぞれ上が300円、下が500円用になっています。

800円なら「500円を1回」と「300円を1回」回し、1000円なら「500円を2回」、といった具合にガチャガチャを回します。お、お、お、おもしろー!

気になるカプセルの中身は……

カプセルの中には、持ち帰り用の袋が入っているので、会計した商品はそれに入れて帰ります。

なお、カプセル自体は、横に専用のゴミ箱があるのでそこに入れて帰りましょう。

役目を終えたカプセルは専用のごみ箱にイン!

無人本屋で本が買えちゃいました! 面白い仕組みですね……! 一体どんな人が、なんのためにこのお店を経営しているか気になりませんか?

実は、ここを運営しているのは普通のサラリーマンなんです。

なんで無人? なんでガチャでお会計? 疑問をぶつけてみた

「BOOK ROAD」店主・中西功さん。普段はごく普通の会社員として働いています

「BOOK ROAD」を運営する、店主の中西さんに話を聞きました。

普段は会社員として仕事でさまざまな店舗と関わることもあるという中西さん。どうして「無人の古本屋」を開店するに至ったのでしょうか。

中西自分が普段仕事をしているなかで思うことを形にしたのがこの店舗なんです。

無人販売って、野菜の販売とかでありますけど、「その文化を受け付けながら現代風にアレンジしたらどうなるだろう?」という考えから生まれた、いわば実験的なお店なんです。

そうした背景もあり、はじめから、利益を重視していません。

自らが思いついたものを実践し、自ら先駆者になった中西さん。そんな実験的な店舗は、人の行動心理を考えることが好きだという自身による工夫がいっぱい。例えば……。

無人のお店の中で、強く「購入した」ことを意識させてくれるのが、コレ!

前述したカプセルの中に袋を入れておくという独自の精算システム。

こちらは購入したものを袋に入れることができ、無人の店舗で「きちんと精算した」ことを周囲に示すことができるので買いやすくなる、という人の心理まで考えられています。

確かに、お金を払っても本をそのまま持って出るのはなんだか抵抗があるかも……。そんな人間心理をうまく突いたのがこの「袋」というわけ!

お客さんから隠れるように店舗を運営

── お店は現在24時間営業で、その間誰でも自由に見ることができるようになっていますよね。中西さんはサラリーマンをしながらどのように店舗の運営を行っているのでしょうか。

中西現在は週2回程度で商品の補充や整理などを行っています。お店は無人でやるのが前提なので、人が立っているのもなぁと思い深夜や早朝などに作業しています。

でも、作業している時に「お店の人ですか?」と声をかけてもらうことが結構ありますね。

カプセルの補充を行う中西さん

── お店の人を見かけることがない無人の本屋で、でも商品はちょいちょい補充されている……ちゃんと人の手は入っている……という状況は、なんだかミステリアスですよね。

私がお客さんでも声かけてしまうでしょうし、どんな人が店主なんだろうとかいろいろ妄想してしまいそうです。

中西だからこそ声かけてくれるんでしょうね。でもお互いに、全部知ってしまうと面白くないから、そうしたミステリアスな部分があって、想像してるぐらいが面白いんじゃないかと思っていますね。

── 「あの人、もしかして店長さんかな……?」みたいな。お店は常に開いているということですが、最初から24時間営業なんですか?

中西いえ、当初は朝に開けて夜には閉じていました。ですが、開店した年の年末に妻の故郷に帰省する際、思い切ってお店を24時間開けておいてみたんです。

そうしたら全然問題もなく、しかも売れていたので「ニーズがあるなら」と思い、お店を24時間開けるようにしました。

これは年末以外にも、お盆でこちらに帰省してくる方にも好評ですね。

── 直接やりとりするわけじゃなくても、お客さんとのコミュニケーションをとれているんですね。

中西そうですね。あとは常連さんで、お酒を飲んだ帰り、〆にここで本を買っていかれるというお客様もいらっしゃいます。

無人ながら、いろんなニーズに応える本屋になっている

本が勝手に増殖する、「生きてる」本屋さん

── 在庫の本は一体どうやって集めているんですか?

中西それが、結構お客様からいただくことがありまして。お店に行ったら、「店舗で役立ててください」と本が置かれていたりするんです。

在庫の本は現在3000冊くらいありますが、そのうち自分の本は5分の1程度です。

わざわざ流行の書籍を仕入れに行うというようなことをしないので、お店で取り扱う商品によって人の層が変わるんです。

手芸の本ばかり置いていた時があり、その時は手芸に興味があるお客様ばかり集まったりしました。

店内にはあらゆるジャンルの本が並ぶ

── 本の属性で客層が変わるんですね。生きている本屋ですね、面白い。

中西本屋って基本お客さんに育てられるというところがあるんですけど、僕はアフォーダンスって考え方が好きなんです。

アフォーダンスというのは「物が情報を発信する」みたいな考え方で、例えば「傘を持っています。さぁ、どこに立てかけよう」となった時に壁際の地面に溝が入っていたりしたら、人は行動として大体そこに立てかけて置くんですよね。

人が見た時にどう動くか、という考え方はこのお店を作る際にもすごく考えました。カプセルでの精算方法もそのひとつです。

── なるほど。やっぱり人の心の動きをよく見ているんですね。

サラリーマン兼古本屋店主が考える、理想のワークスタイル

── 今、会社員と無人本屋店主という二足のわらじを履いているわけですが、中西さんの理想のワークスタイルとは?

中西「理論」と「実践」という対になる要素があるとして、仕事をする上では理論だけじゃなく実践もできたほうがいいと思うんですよね。

しかし会社、特に大きめのところでは「理論」が重視されて「実践」が難しかったりします。

理論ばかり考えて頭でっかちになってしまうのも違うし、実践ばかりになるのもなんか違うなと思います。

なので、「実践」をこの本屋で、「理論」を本業でと、どちらもできる今の働き方は、結構自分の理想に近いかもしれないですね。

あとは、本業とは違う世界の人たちとのつながりを自分から作りに行くのも楽しいですね。規模を小さくして自分が動ける範囲でやろうと思ったら、できちゃうものだし。

三鷹で出会えるかも? 運命の一冊

一見雑然と見えるけど、それが逆に手に取りやすい。「表紙買い」もアリ!

ミステリアスな謎の無人の古本屋、実際に訪問してみると創意工夫がちりばめられたなんとも実験的な本屋でした。この「無人の本屋」というテーマで小説が一冊書けちゃいそう。

「BOOK ROAD」の店主の中西さんは自分の直感を信じて常に新しいことに挑戦している、そんな印象を受けました。

無人の古本屋以外にもいろいろと構想しているという中西さんを、ぜひ応援してください!

取材・編集/井口エリ+プレスラボ