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ユネスコも人間国宝も認める高級和紙。絶滅寸前の原料を守れ!

茨城県久慈郡大子町で生産される高級和紙の原料「大子那須楮(だいごなすこうぞ)」。

“ユネスコ無形文化遺産”にも登録された岐阜県美濃市の“本美濃紙”には欠かせない原料ですが、生産農家は減少の一途でまさに絶滅の危機。
数少なくなった生産者の齋藤邦彦さんは、日本古来の紙文化を守るために奮闘しています!

“ユネスコ文化遺産”に登録された和紙の原料は、「大子那須楮」のみ!

齋藤さんは自宅で雑貨などを扱う商店を営みながら、40年以上楮(こうぞ)の栽培をしています。

取材に訪れて案内してもらったのは、齋藤さんの背丈の倍はある大きな楮が真っ直ぐに育つ畑。
楮の生産を行っている地域は全国でも稀で、今では茨城県の大子町と高知県が主な生産地となっています。

2014年に“ユネスコ無形文化遺産”に登録された岐阜県美濃市の“本美濃紙”の手触りは大子の楮ならでは

2014年に“ユネスコ無形文化遺産”に登録された岐阜県美濃市の“本美濃紙”の手触りは大子那須楮ならでは

大子町で丹精込めて育てられる大子那須楮は、繊維が細く、最も和紙に適した楮として評価されています。

その質の良さから、国指定重要無形文化財となっている岐阜県美濃市の“本美濃紙”で使用される原料は、大子町で生産された最高級の大子那須楮(だいごなすこうぞ)のみ。

本美濃紙は1,300年の歴史を誇り、やわらかみのある独特の肌触りが特徴。
京都迎賓館の障子や照明にも使われる格式高いもので、2014年には“ユネスコ無形文化遺産”にも登録されたほど、世界的に評価の高い和紙なのです。

齋藤
もともと俺は生産しかやってなかったんだけどが、最近は加工も販売も自分でやるようになったんだ。直接、紙すき職人さんとも交流させてもらってるからね。
 今年、岩野さんが送ってくれたという版画、葛飾北斎の“凱風快晴(赤富士)”


今年、岩野さんが送ってくれたという版画、葛飾北斎の“凱風快晴(赤富士)”

人間国宝の越前和紙職人“九代岩野市兵衛(いわのいちべえ)”さんも、大子那須楮に魅了され、齋藤さんと交流のある紙すき職人のひとり。
齋藤さんの自宅には、岩野さん直筆の書が大切に飾られています。
岩野さんが漉く紙は、すべて大子那須楮で漉(す)かれており、パリのルーブル美術館に展示される一流版画にも使用されています。

人間国宝の越前和紙職人、九代岩野市兵衛さん直筆の書は“紙に生きるよろこび”

人間国宝の越前和紙職人、九代岩野市兵衛さん直筆の書は“紙に生きるよろこび”

恵まれた気候と土壌が、最高級品「大子那須楮」を生む!

齋藤
紙の原料の楮で、昔っからここは日本一って言われてたんだから。高級な和紙はだいたいここの楮が原料だったんだよ。
齋藤さんがご夫婦で協力して育てている真っ直ぐにぴんと張った楮

齋藤さんがご夫婦で協力して育てている真っ直ぐにぴんと張った楮

大子町が質の高い楮を生産できる理由は、その気候と土壌にあります。
傾斜地が多くて日当たりが良く、昼と夜の寒暖差が大きいこと。
また、土に石が混じっているため、水はけが非常に良いことも楮生産に向いています。

楮を収穫するときに使用していると手にとって見せてくれた大きなハサミ

楮を収穫するときに使用していると手にとって見せてくれた大きなハサミ

毎年1月から3月は、楮の収穫・加工。
4月から12月までは、夏場の暑いときでも鎌で地面の下草刈りをしながら、幹からでる枝をとるなどして一本の楮としてきれいに育つよう“芽かき”と呼ばれる手入れをします。
頻繁に手入れをすることで、途中で折れ曲がったりせず、ぴんと真っ直ぐな楮が育ちます。

畑から戻ったら手や靴を洗ったり、泥を落とすという自宅横を流れる澄んだ小川

畑から戻ったら手や靴を洗ったり、泥を落とすという自宅横を流れる澄んだ小川

齋藤
以前、楮の苗木をほかの地域に分けてあげたことがあるんだけど、途中で折れ曲がるものがあったりして、全体的に品質に違いが出てしまうんだよね。土地の特性もあるんだけど、ちゃんと手入れしないとダメなんだ。

恵まれた土壌と気候、そしてていねいに手をかけて育てることで、高品質な大子那須楮が生産され、この楮の皮が、和紙の原料となります。
薪をくべた釜に収穫した楮を入れ、蒸すことでふやけた皮を10人ほどで手分けしながら、1本1本ていねいに皮を剥いていきます。

齋藤さんの自宅の敷地内にある、薪をくべて楮を蒸すための窯

齋藤さんの自宅の敷地内にある、薪をくべて楮を蒸すための窯

皮を剥いたあとの楮の芯部分は、お風呂などを沸かす燃料として利用します。

皮を剥いたあとの楮の芯部分は、お風呂などを沸かす燃料として利用します。

70歳で若手!? 絶滅の危機に「大子那須楮保存会」を発足!

大子町内で60軒あるという楮の生産農家は、年々高齢化が進み、全体の生産量はどんどん減少。
70歳になる斎藤さんですら、若手とのこと。
楮の生産農家だけでなく、楮を蒸かす窯も修理する人がどんどんいなくなってしまっているのが現状です。

育てている楮を手でしっかり握り、張り具合を丁寧に確かめる齋藤さん

育てている楮を手でしっかり握り、張り具合を丁寧に確かめる齋藤さん

地元の大子町でも楮の認知度はかなり低いこともあり、生産農家の後継者不足には慢性的に悩まされています。
この現状を打開するために、町の人が一体となって2016年11月14日に結成されたのが“大子那須楮保存会”。
齋藤さんが会長を務めるこの組織における目的のひとつは、大子町で生産される楮の素晴らしさと生産農家が直面している現状を多くの人に知ってもらうことです。

齋藤
楮の生産量をもっと増やして、紙すき職人さんへ直接販売もして、後継者の育成にも力を入れていきたいんだよね。何より大子町の楮の素晴らしさを、もっともっと知ってもらいたいんだ。そうすれば興味が湧いて、楮の生産をやりたいと考える人も出てくるかもしれない。大子町の楮を頼りにして必要としている人がいるんだから、その火を絶やしてはいけないんだよ。

古来から伝わる日本文化のひとつである和紙は、大子町で生産される高品質な大子那須楮があってこそ作られるもの。
この和紙の原料となる楮と後継者の危機に、70歳で力強く立ち向かう齋藤さんの挑戦を応援していきましょう。

小林 弘和(こばやし ひろかず)

小林 弘和(こばやし ひろかず)

WEBディレクター/ライター・編集者/地域プロデューサー

WEB制作会社勤務時代に移住・交流を応援する官公庁系WEBメディアのサイトを運用。北海道から鹿児島まで様々な地域で活躍する移住者や取り組みを取材。現在、企業サイトや自治体サイト制作のほか、地元でもある茨城県常陸太田市里美地区の地域WEBメディアを運営。その他、野外映画などの地域イベントも企画。東京と茨城の2拠点で活動中。
小林 弘和(こばやし ひろかず)

小林 弘和(こばやし ひろかず)

WEBディレクター/ライター・編集者/地域プロデューサー

WEB制作会社勤務時代に移住・交流を応援する官公庁系WEBメディアのサイトを運用。北海道から鹿児島まで様々な地域で活躍する移住者や取り組みを取材。現在、企業サイトや自治体サイト制作のほか、地元でもある茨城県常陸太田市里美地区の地域WEBメディアを運営。その他、野外映画などの地域イベントも企画。東京と茨城の2拠点で活動中。