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森のポートランド!?茨城県で木の循環を円滑にする「森のプロたち」を繋ぐmalsaプロジェクト

茨城県の最北部、常陸太田市里美地区で地域おこし協力隊制度を活用して木材プロジェクトを推進している田中あかねさん。
現在、移住して3年目という田中さんが力を入れて取り組んでいるのは“里美の杉を日常へ”をコンセプトに活動する“malsa(マルサ)”プロジェクトです。

知り合いのデザイナーにつくってもらったというmalsaのロゴイメージは“回る里美の森”

知り合いのデザイナーにつくってもらったというmalsaのロゴイメージは“回る里美の森”

malsaが目指しているのは “木を植える→切る→使う”という里美の森のサイクルをより円滑に回すこと。
田中さんたちは、森林用語で“回る”といわれるこの森のサイクルのなかで、特に“使う”という部分に焦点をあてて活動しています。

田中
地域の方にたくさんお話を聞く中で、山を持っていてもお金にならないとよく耳にしました。そのなかでだったらお金になる方法考えられないかな?と思いました。いくら木があっても使われなければ、切ることもできないし、植えることもできないですよね。ですから、malsaの活動を通して、少しでもみなさんに木の使う良さを知ってもらえればと…。生活の中でできるだけ木を使ってもらえたらと思うんです。


ポートランドと里美はどこか似ていると話すmalsa代表の田中あかねさん

ポートランドと里美はどこか似ていると話すmalsa代表の田中あかねさん

そんな真っ直ぐな想いを話す田中さんが育ったのは、埼玉県の山間にある小さな町。
故郷の影響でずっと木に関心があったのではないかと聞いてみると、意外にも里美に来るまでは山や木に関心があったわけではなかったといいます。
自然や山登りもそれほど好きではなく、まったく自然の知識もなかったのだとか。

地元を離れ、東京にある短大に進学後、別の大学へ編入、大学では地域の課題抽出とそれに対するアプローチを考える “地球市民学”という分野を学びました。
そして、在学中にアメリカのポートランドに8ヵ月間留学します。

田中
ポートランドは、都市と田舎のちょうど真ん中のような街でした。オレゴンの山林も近くにある。自分のほしいものは自分でつくる。みんな自分たちが住むポートランド大好き!という雰囲気がありました。しかも、好きになるための努力をしているというか…。そういうところが、里美となんとなく似ているなと感じるんです。里美の人は、里美のことが好きだし。あとは、よそ者でも居場所をつくってくれるというか…。よそ者でも受け入れてくれるところも似ているかもしれません。

地域の仲間が繋がりスタートしたmalsaの活動とは?

地域の7割近くが杉や檜の山林で、かつて全国でもトップクラスの林業先進地だったという里美地区。
最盛期には、全国各地から視察が訪れるほどだったと話す人もいます。

しかし、現在は丸太の価格も当時の5分の1ほどに下がってしまい、林業で生計を立てているのは地域内で数人しかいなくなってしまいました。

戦後、復興のために大量の木材が必要になり国産材だけでは足りず、海外の安い木材を輸入しそれが広まったことで、それまでの相場が少しづつ崩れたことが原因の一つだといわれています。

今では山の持ち主は地元を離れ、管理が行き届かず今にも地すべりを起こしそうな山林が、車で何気なく走っているときに目にとまる場所があるのです。

木工体験イベントに向けて綿密な打ち合わせを行うmalsaメンバー

木工体験イベントに向けて綿密な打ち合わせを行うmalsaメンバー

そういった背景や状況を、地元の人に聞いていたこともあり “里美の木を使って何かできないか”という想いを持ちはじめた田中さん。
その想いと呼びかけに賛同したのは、地元の木工作家の佐々木武さん(中央左)、大工として活躍する菊池政也さん(中央右)、常陸太田市森林組合で働く中野修さん(一番右)の3名でした。

いずれも仕事で木を扱うスペシャリストの方々。
意外にもこの3名はそれぞれ顔見知り程度ではあったものの、それまで深くは繋がっていなかったのだといいます。

そして、2015年の11月に立ち上げを行い、組織の体制を整えたのが翌月の12月。
その後、初回のイベントに向けて試作やPRなどを重ね、2016年の3月に記念すべき第1回目となる木工体験イベント“さとみのおくりもの”を開催しました。

初めて開催した木工体験イベントでつくった多用途に使える杉板の椅子

初めて開催した木工体験イベントでつくった多用途に使える杉板の椅子

第1回目の体験イベントで参加者と一緒につくったのが、こちらの子ども用の椅子。参加したのはお子さん含む4組、合計10名ほどでした。

この椅子は、用途によってはちょっとした本棚になるだけでなく、逆さまにすると子ども用の机や台所の踏み台にも使えるといいます。“せっかくつくるなら普段使えるもの、長く使えるものを”というmalsaメンバーの想いと工夫が詰まった作品です。

木に触れるきっかけづくりと生まれる地域との繋がり

2016年8月のさとみ夏祭りで行った “カンナ削り体験”の様子

2016年8月のさとみ夏祭りで行った “カンナ削り体験”の様子

malsaは里美で開催される地域のお祭りなどにも積極的に出展しています。
もちろん、体験イベントの講師は木のスペシャリストであるメンバーのみなさん。
来場した地域の方々とふれあいながら、子どもから大人まで木との触れ合い方を丁寧に教えています。

カンナで削った木は、軽くて柔らかでフカフカの感触

カンナで削った木は、軽くて柔らかでフカフカの感触

カンナで削った木からつくったのは杉と檜の自然な香りが楽しめる“香り袋”。
車内の消臭はもちろん、寝室や浴室に置いてリラックス効果を高めることができます。
この体験イベントを通して実際に木に触れてもらい、少しでも良さを感じてもらいたいと、その想いを語ってくれました。

田中
里美に来て、たくさんの人との出会いから、自分自身の内面に気づきをもらったのはよかったですね。それは、お金では解決しない人との付き合いやモノ、地域との関係性。東京で暮らしていたときには感じなかった、3年前の自分と比べて一番大きく変わった部分だと思います。



最後に、今後のmalsaの活動について田中さんにお聞きすると…。

田中
こういった地域のお祭りへの出展はもちろん、malsa独自の体験イベント“さとみのおくりもの”の開催をもっと増やしていきたいと思います。そして、木を使うことの重要性を知ってもらうきっかけづくりをして、生活の中でもっと木を使ってもらえるように動いていきたいです。

地域で出会った仲間とともに、里美はもちろん日本全国が抱える林業の問題に対して地道な課題解決のアプローチをしているmalsaプロジェクト。今後の動きに注目したいmalsaの活動を一緒に応援してみませんか?

小林 弘和(こばやし ひろかず)

小林 弘和(こばやし ひろかず)

WEBディレクター/ライター・編集者/地域プロデューサー

WEB制作会社勤務時代に移住・交流を応援する官公庁系WEBメディアのサイトを運用。北海道から鹿児島まで様々な地域で活躍する移住者や取り組みを取材。現在、企業サイトや自治体サイト制作のほか、地元でもある茨城県常陸太田市里美地区の地域WEBメディアを運営。その他、野外映画などの地域イベントも企画。東京と茨城の2拠点で活動中。
小林 弘和(こばやし ひろかず)

小林 弘和(こばやし ひろかず)

WEBディレクター/ライター・編集者/地域プロデューサー

WEB制作会社勤務時代に移住・交流を応援する官公庁系WEBメディアのサイトを運用。北海道から鹿児島まで様々な地域で活躍する移住者や取り組みを取材。現在、企業サイトや自治体サイト制作のほか、地元でもある茨城県常陸太田市里美地区の地域WEBメディアを運営。その他、野外映画などの地域イベントも企画。東京と茨城の2拠点で活動中。