感謝の気持ちで命を射ち、活かす。 村内唯一の女性ハンター。

東京で生まれ育ち、大学卒業後は大手通信会社で営業職に。そんな都会で生きてきた女性が、村内唯一のハンターに転身!

どんな動物がターゲットなの?どうやって動物を見つけ、追い込んでいくの?動物を射つなんて、怖くないの?

たくさんの疑問を解消すべく、群馬県片品村の地域おこし協力隊として活動する女性ハンター・本間優美さんに密着してきました!

平日は都会の営業ウーマン。
週末は山ガール!

東京で生まれ育ってきた本間さんと自然を深くつなげたキッカケは、大学時代に参加した環境NGO。夏フェスなどの活動に参加するために、キャンプや登山にも使えるアウトドア用品が増えていきました。

ちょうどオシャレなアウトドア用品が出始めた時期とも重なり、シンプルなデザインでありながら機能的なアウトドアグッズに惹かれ、お気に入りのものを揃えているうちに、テントを背負って登山にも出かけるようになります。

本間さん
お気に入りのアウトドアグッズを使いたいために山に登ったり仲間とキャンプをするようになり、そこで他の人が持っていたアウトドアグッズに惹かれ、買いに行き、そしてまた使いたいから山に入る、という無限ループを繰り返していました(笑)。いつしか、すっかり本格的な装備まで揃えてしまいました。

 
大学卒業後、本間さんが就職したのは大手通信会社。当時はまさに、インターネット商用サービス黎明期で、急成長する企業で営業として配属され、仕事は「やってもやっても終わらない」状態。

必死に仕事をこなしていく中で、見つけた楽しみは登山。都会で働く力をチャージするため、週末のたびに北アルプス方面へ出かけるようになります。

本間さん
当時、平日は都会のビルの中で働き詰め。それがひとたび山に入れば、木の香りやマイナスイオンに包まれる心地よさを感じられ、山を歩きながら植物を観察したり、山頂からは疲れも吹き飛ぶ絶景を楽しめたり。

山に入るのは体力的にも精神的にもきついところはありますが、やめられません。仕事が大変な時期でしたから、自己鍛錬にもなっていたと思います。

本格的な装備を備え、すっかり山ガールに!

食害による尾瀬の生態系の危機。
必要なもの、足りないものは?

そんな中、2011年の東日本大震災をきっかけに自然とともに暮らしたい気持ちが高まり、知人の紹介で訪れた片品村に移住する決意をします。

本間さん
片品村は東京から二時間ほどで近いことも決め手でした。

まずは協力隊に参加して地域に慣れるところからはじめてみようかと。営業職だったこともあり、地元の人とのコミュニケーションには困りませんでした。みなさん親切だし、協力隊の活動も応援してくれる。恵まれていると思います。

 
片品で暮らし始め、現地の人と話すうちに知ったのが、尾瀬国立公園のシカによる食害が想像以上だったこと。

貴重な樹木の樹皮が剥がれ、ニッコウキスゲやミズバショウなど尾瀬の代表的な植物の新芽が食い尽くされ、根茎が掘り起こされて食べられてしまうことも。

尾瀬が育んできた独特の生態系が破壊される危機にあり、狩猟による駆除が必要な状態ですが、ハンターの担い手も減っていました。

本間さん
『片品村で暮らす自分は狩猟をやる意義がある』と、ストンと腑に落ちました。そうだ、私がやろう!と、銃の免許を取得しました。

シカの命を粗末にしないよう、捕獲して処分されるだけではなく、シカ皮を製品加工するビジネスをやろう、と。

シカ皮製品を作って販売していくことで、食害により生態系が変わっている原因は私たち人間にもあると知ってもらいたいです。

役割は「射手」。
待ち場で獲物を待ち、射つ。

地域の狩猟を担うのは、猟友会。猟友会の猟師にとって、狩猟は職業ではなく生活の一部です。

それぞれの方が職業を持っているので、活動は主に週末。チームを組んで、狩猟をすることで食害を防ぎ、里山保全につなげています。

本間さん
私が主に行っている狩猟は、チームプレーで行う巻き狩りです。

獣道や足跡で獲物の居場所の目鼻をたてる見切り役がいて、そこを囲むように射手を緻密に配置させる方法で行います。

猟期は11月中旬~2月末。この期間は、地元の猟友会が自由に狩りをして良い期間なんです。落葉した冬山は見通しもよいため、狩猟に適しています。

反対に春夏の駆除期は、県や村などの自治体から駆除要請を受けて山に入ります。

 
巻き狩りは、動物を見つけて追い立てる「勢子(せこ)」という役割と、最後に動物を仕留める「射手」(片品では「立目(たつめ)」とも呼ぶ)に分かれ、本間さんは主に射手を務めています。

狩りの日は、射手としての装備と、雪の中での活動となるので冷え対策も万全にして、朝の8時頃に集合します。その後、獲物であるシカを待つ「待ち場」へ移動し、「勢子」が追い込んでくるシカが現れるのを待ちます。

身の危険を感じた獲物はとても危険で、間違えれば向かってくることもあり、常に油断はできません。

冬の雪山は極寒。射手としての装備はもちろん、冷え対策も欠かせません!

銃を持って雪の中を歩き、待ち場を目指します。

射手として待ち場でひとり、厳しい寒さの中で山の自然と同化して獲物を待ちます。

本間さん
昔は勢子(せこ)が若い人の役割で、その役割が十分果たせるようになると、射手をするという順番だったそうです。

最初から射手をさせてもらっていることを考えると、ベテラン猟師さんたちが、新米である自分の待ち場に獲物を追い立ててくれるのだから仕留めなければ!という気持ちになります。

片品村の猟師さんたちは、狩猟に興味を持つ若い人が少しでも増えれば…と、経験の浅い自分をあたたかく迎えてくれる。

こういう厚意を無駄にしたくない。と強く思いますし、自分にできる方法で猟師の役割を正しく理解してもらうための活動をしていきたいと思っています。

 
狙うのは、シカのアタマやクビ。胴体に傷を付けずに仕留めることができるので、シカ皮を無駄なく使えます。

本間さん
重い銃を構えて追い立てられた獲物に射線を合わせるのは容易なことではありませんが、獲物を目前にして集中するしかありません。

獲物に気配を感じさせてはいけないので、動いたり音を立てることはできません。寒くてもじっと動かずに獲物を待ちます。

追い立てられたシカを狙う!はじめて成功した瞬間。

本間さん
シカが増えすぎて農林業に危害を加えるために駆除捕獲の対象になってしまっていますが、ライフスタイルの変化でシカの肉や皮の需要が減ったり、温暖化でシカの生息域が広がったり、過疎がすすんで荒れた田畑の雑草がシカのエサになってしまったりと、日々の生活が山や獣たちから離れてしまった人間の生活も関係してると思います。

山と良いバランスを保ちながら、余すことなく鹿を活用できれば、自分にも山の環境を変えられるんじゃないかと思っています。

狩猟に体力を、シカ皮の製品化には頭もつかって挑戦していきたいです。今はまだ、どちらも奮闘中で全体的な底上げが必要なんですけどね(笑)

獲物の捕獲を喜ぶ猟友会のメンバーと本間さん。狩猟はチームワークが大切!

ミシンも操る女性ハンターの
次なる夢は、ジビエ料理。

シカ皮の製品化は、なんと本間さん自らミシンを操り縫製しています!

ハンターとしての勇ましい姿と、ミシン前で微笑む姿。失礼ながらギャップがかなりありますが、どちらも本間さんにとっては大切な活動、大切な時間です。

本間さん
シカ革のなめし加工をする業者さんを見つけて発注。指定した色の一枚革にしてもらっています。

革はとても柔らかくて繊細なので縫製に苦労しますが、静かな環境でじっくりできる製作もまた楽しい時間です。

見晴らしのいい山小屋で、シカの命を大切に活かしています。

「尾瀬鹿工房」の製品として、尾瀬国立公園内や、地元の直売所などで販売されています。

本間さん
製品化の段階でも、地元の人からのアドバイスが活きています。尾瀬国立公園内でよく売れるものや、観光客が手に取りやすい価格など、尾瀬を見つめてきた人のアドバイスは目からウロコのこともあり、片品で得た人とのつながりに感謝しています。

 
駆除されるシカの命を無駄なく使うために始めたシカ皮の製品づくり。

今後はジビエ料理として、栄養豊富なシカ肉も提供していければ…と話す本間さん。片品村の自然を感じながら食べるジビエ料理は、想像するだけでワクワクしてきます。

尾瀬の自然が守られること、そして絶品ジビエ料理が食べられる日が来ることを願い、本間さんの今後の活動を応援しましょう!