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47都道府県のラスト・鳥取初のスタバと同日オープン! 本で人がつながるブックカフェ

鳥取県と言えば、あのスターバックスコーヒーが47都道府県中、ようやく最後に進出したことで話題を呼んだのも記憶に新しいところ。
そんな鳥取県で、若干24歳にしてブックカフェをオープンした強者がいます。

しかも、開業を決意したときは、日本全国を旅するバックパッカーで、貯金はわずか1万円!
誰が見ても無謀に思える挑戦を、どのように実現したのでしょうか?

カフェやります!宣言
バックパッカーの無謀な挑戦始まる!

2015年5月23日、鳥取県に初めてスターバックス・コーヒーがオープンしました。
47都道府県で唯一「スタバ」がない県だった鳥取。
県知事の「スタバはないが、スナバ(鳥取砂丘)はある」という発言と、それを端に発する「すなば珈琲」の展開など、話題が話題を呼び、「スタバ」オープン時には1000人の行列ができたほどです。

ですが、この「スタバ」や「すなば」に負けない、注目のカフェが鳥取にあります。

そのカフェとは、鳥取駅から徒歩5分。
大通りから1本入った路地にある、岡田良寛さんが店主を務める『Book Café ホンバコ』です。
まちに関わる様々な人から寄贈された本が並ぶ木製の本棚「ホンバコ」が壁一面に積み上げられ、気になる本を自由に手にし、読むことができます。
コーヒーを飲みながら、本と出会い、まちの人と出会うことができるカフェです。

岡田
大学院を休学して2年間、バックパッカーのように全国各地を旅して回ったのですが、そこで知ったことは、楽しいまちには人が集える場所があることでした。また、旅先で仲良くなった人の家にお邪魔すると目に入るのが本棚。並んでいる本から、その人の趣味や考え方など、人の内面が見えてきて面白かったんです。出会って間もない人の“人となり”を知るには、本棚を見るのが一番早いと感じたんです。集う場所としてのカフェに、たくさんの人の本棚があるのは面白いのではないかと考えました。

そう語る岡田さんは頼りがいのある若者に見えますが、フラフラとしていた、典型的な「モラトリアム人間」。
鳥取市の高校を卒業した後、広島の大学へ。卒業後、とりあえず進学した大学院も、すぐに休学してしまいます。
ブックカフェ開業までは、休学しても「何をやりたいのかわからない」状態が続き、まちづくりに興味が出てきたといっても「自分の軸がない」と自分自身の方向性を決めきれずにいました。

大学院に1日も通わず「自分探しの旅」をしていた岡田さん。今は真面目な青年に見えますが…?

大学院に1日も通わず「自分探しの旅」をしていた岡田さん。今は真面目な青年に見えますが…?

岡田
熱海のまちづくりに取り組むNPO法人のインターンをしたり、旅をしながら出会った尾道のゲストハウスに関わったりしてきましたが、面白いまちを探して全国各地をフラフラと旅していました。そんなときに、リノベーションスクールが地元の鳥取で、しかも誕生日に開催されると聞き、運命的なものを感じ、参加しました。

リノベーションスクールでは、実際の遊休不動産を対象に、事業プランを立てて、最終的には不動産のオーナーにプレゼンテーションするのですが、そこで今の『ホンバコ』になった空き店舗に出会いました。店舗の活用策を考える中で、いろいろな人の本箱があるブックカフェ、というコンセプトを思いつき、オーナーへのプレゼンテーションで『このブックカフェはぼくがやります!』と宣言したんです。

貯金はわずか1万円!
助けてクラウドファンディング!

もともとは喫茶店だった空き店舗のオーナーも、『ホンバコ』のコンセプトに共感。
早速開業に向けて動き出しますが、そこで大きなハードルが…当時、岡田さんには貯金が1万円しかなかったのです。

店舗の改修費用は、およそ600万円もかかるのに!!

岡田
旅をしていたときは、ヒッチハイクで移動したり、人の家に泊めてもらったりお金がかからない生活をしていましたが、その代わり貯金もない(笑) とりあえず、親族に頼み込んで資金を作り、リノベーションスクールをきっかけに生まれた支援組織『鳥取家守舎』やオーナーさんにも改修費の一部を出資していただきました。これらは開業後、家賃というかたちで投資回収してもらうことになっています。売上予想から、払える家賃をはじき出して、そこから逆算して改修にかける費用を決めました。また、クラウドファンディングも活用しました。

クラウドファンディングで募集した金額は50万。
費用全体から見た割合はわずかですが、最初から岡田さんは少額でもクラウドファンディングを使うことを考えていました。

岡田
当時、鳥取ではクラウドファンディングを活用している事例は少なかったので、話題になるのではという目論見がありました。また、オープン前に資金だけでなく、ファンを募る狙いもあったんですが、メディアに取り上げられることも多く、予想以上の宣伝効果がありましたね。
クラウドファンディングは50万円の募集のところ、90万円近くを集めてプロジェクト成立!

クラウドファンディングは50万円の募集のところ、90万円近くを集めてプロジェクト成立!

募集金額50万円を超える90万円近くが集まり、開業に向けていよいよ改修がスタート。
改修はワークショップとして、リノベーションスクールの仲間やまちの人、そしてクラウドファンディングでファンとなった人が関わり、一緒に店作りを行いました。

岡田
みんなでワイワイと床や壁をはがしたり、終わった後は一緒にお酒を飲んだり、楽しみながら改修作業をしていきました。まちの楽しい場所をみんなでつくる、というのは旅で訪れた面白いまちが実践していることだったので、自然な感覚でやっていました。やって来た人が楽しかったからと、次は違う人を連れてきて…と、応援してくれる人が増えていく実感があって、ワクワクしながらオープンに向けて準備を進めていくことができました。
オープン前のワークショップ。まちの人を巻き込こみながら、楽しく改修作業を進めていきました。

オープン前のワークショップ。まちの人を巻き込こみながら、楽しく改修作業を進めていきました。

開業日は鳥取県初のスタバと同じ日!
オープン前には対抗して大行列?

そして、いよいよオープンの2015年5月23日。
「狙ったわけではないのですが」(岡田さん)、鳥取県初のスターバックスコーヒーがオープンするのと同じ日!
仲間やまちの人、クラウドファンディングやワークショップでつながったファンなど、多くの人がスタバに対抗して列を作ってくれました。

岡田
おかげさまで、オープン当初はフィーバーのような忙しさでした(笑) オープン直後は話をしにくるお客さんが多かったですが、最近は本を楽しみに来てくれる人も増えてきました。

『ホンバコ』では本やコーヒーを楽しむだけでなく、ほぼ毎週ミニイベントも開催しています。
幅広いジャンルの人を招いてのトークイベント、ゲストがオススメの本を紹介するホンバコラジオ、日本酒やジビエを楽しむイベント、さまざまなワークショップなど、「ホンバコ」という空間をまちの人たちが自由に使い始めています。

そして、なんとこの場所をキッカケに鳥取に移住してきた人も現れました!

埼玉から砂丘を見にきた若い女性がふらりと訪れ、その日に開催していたイベントで面白い人たちと出会い、意気投合。
一気に移住に向けた話が進み、数ヶ月後から本当に鳥取に住み始めました。
知り合いが少ない移住者にとっても、『ホンバコ』はまちの入り口となってくれる場所です。

ホンバコの壁にはこれまで開催したイベントが次々と貼られています。オープン2年足らずでびっしりです!

ホンバコの壁にはこれまで開催したイベントが次々と貼られています。オープン2年足らずでびっしりです!

岡田
変化し続けてないとモチベーションは続かないタイプなので、次にやることも考え中です。『ホンバコ』を通じてつながりが生まれ、自分がやりたいことがすぐに実行に移せそうな環境が整ってきているのは、いい流れですね。これからも、このまちで楽しく過ごす企画を仕掛けていきたいです

人のつながりを生み出すことで、「ホンバコ」も岡田さん自身も、現在進行形で変化を続けています。

鳥取に出かけたら、「スタバ」よりも「すなば」よりもまずは「ホンバコ」へ!
まちを面白く変えていく雰囲気を感じながら時間を過ごしてみてはいかがでしょう?

西嶋 一泰(にしじま かずひろ)

西嶋 一泰(にしじま かずひろ)

民俗学者・ライター

専門は祭り。島根県大田市で山村留学を絡めた地域おこしに従事。