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女子会で起業!?元公務員が島根県の三瓶山の原っぱで起業した理由

子育てをしながら、島根県の大田市役所に勤めていた和田裕子さん。

地域の特産品をPRする仕事をしていましたが、ある時、壁にぶつかります。
想いをもった農家さんや職人さんたちの活動が、後継者がいないことによって途絶えようとしている事態に直面したのです。

そんな時、和田さんは軽やかに独立の一歩を踏み出しました。
市役所を退職し、自らがプレイヤーとなり、大田市の地域資源を「食」を通じて広める活動を始めます。

「この地域がこんなにも面白く、ワクワクできる場所だということを、100年先の子どもたちに伝えたい」

そんな和田さんと想いを同じくする女性たちが集まって、2015年に起業。国立公園・三瓶山の麓で西の原レストハウスの運営を始めました。

挑戦を続ける女性たちの想いを、株式会社necco(ねっこ)代表取締役の和田さんに語ってもらいました。

島根県大田市の三瓶山麓にある「西の原レストハウス」。食堂・売店・情報ブースを和田さんたちが運営。

島根県大田市の三瓶山麓にある「西の原レストハウス」。食堂・売店・情報ブースを和田さんたちが運営。

田舎で目をキラキラさせている大人たちに惹かれて


和田さんが活動している地域を象徴する三瓶山の西の原の原っぱと共に。

和田さんが活動している地元を象徴する三瓶山の西の原の原っぱと共に。

和田
公務員になったときは、地域おこしとか興味なかったんです。子どもを育てて、働いて家計を支えるわよ、というだけだったんです。
でも、ふるさと情報誌のインタビューで出会った人たちが、大人なのにみんな目をキラキラさせているんですよね。


出雲市出身の和田さんは、高校卒業後、結婚・出産を機に移り住んだ島根県大田市で市役所に勤めはじめ、様々な人に出会います。

昔ながらの方法で海水から塩づくりをする方、
古民家を田舎暮らしの体験の場にされた方、
銀山の港で民泊を始めた方。

大田の自然を存分に活かした暮らしをされる人たちが持つ「生きる力」を子どもたちにも伝えたいという想いを強くもつようになったそうです。

西の原レストハウスの「きまぐれランチ」。地元の旬の食材を使っています。

西の原レストハウスの「きまぐれランチ」。地元の旬の食材を使っています。

地域の宝物を発信するため、市役所を退職、カフェをオープン

その後、和田さんは産業振興部で販売流通を担当。

大田の特産品を、都会へ売り込むため奔走します。事業者と大田の生産者を仲介し、商談を設定。ですが、そこで想いやスピード感のズレに直面します。

今まさに、後継者がいないことで失われていく地域の宝物を間近に見ながら、思うように動けない自分にいらだっていました。

和田
よく踏み出したねって言われるんだけれど、全然流れにのった感じです。公務員の壁を感じて悩んでいたから、解決策として「それ」が思い浮かんで自然に選んでました。


和田さんは11年勤めた市役所を2010年3月に退職。同年6月にアンテナカフェ「ハレの日」をオープン。

また、地元の食材を探し求めるなかで、想いを同じくする女性たちとグループも立ち上がりました。
国立公園・三瓶山の麓で、地域の農家さんたちに畑作りを一から教えてもらいながら、野菜を育てる「さんべ女子会」です。

和田さんと想いを同じくする仲間の輪は確実に広がっていきました。

さんべ食堂の厨房。地元のお母さんたちも参加。

さんべ食堂の厨房。地元のお母さんたちも参加。

閉鎖の危機にあったレストハウスの運営を、起業して引き受ける

そんな和田さんたちに、再び転機が訪れます。
大田市のシンボル、三瓶山。その西側に広がる原っぱの前のレストハウスが閉店するというのです。

大田の自然や魅力を伝える玄関口の灯を絶やしてはならない、そんな想いから「さんべ女子会」で出会った女性たちが、西の原レストハウスの指定管理者として名乗りをあげるべく、株式会社neccoを設立しました。

和田
体にいい、まっとうな食べ物を正直につくっている人たちの農業っていうのは、次の世代にもつながっていくことだし、それをするプロセスっていうのは子どもたちの生きる力にもつながります。
でもそれは、ボランティアじゃ続きません。想いだけでは続かなくって、現金化していくことで持続可能性ってでてきます。

食と農業のサイクルで人づくりができていくといいなって思っています。今、超チャレンジしてるんですよ。


株式会社neccoの現在のメイン事業は、西の原レストハウスで行っている「さんべ食堂」。
地産地消のこだわりを保ちながら、天候に客足が左右される高原での飲食業を採算に乗せるため、手作りの「スローなファーストフード」開発を日々行っています。

和田さんたちが開発したキーマカレー「大脱走」。

和田さんたちが開発したキーマカレー「大脱走」。

大人がワクワクする姿を子どもたちにみせたい

商品開発事業では、西の原の放牧牛を抜け出し脱走した事件にちなんだ、インパクト大のレトルトカレー「大脱走」を開発。

さんべ女子会のメンバーでもあった地元三瓶の「かわむら牧場」の協力があって実現しました。

neccoは、産直運営・イベント企画等も行っていますが、和田さんがこれから力を入れていきたいのはツアー企画。
既にいくつかのツアーが試行されています。

地元の素材でつくる「さしすせそツアー」や、地域で担い手不在のために放置されている梅・柿・栗や様々な地域資源を味わいつくす「もったいないツアー」。
レストハウスを拠点とした様々なオプションツアーを用意した「さんべセラピー」などなど。

和田さんが想いを寄せている「地域と食」ですが、その「地域と食」を守り伝えていく第一次産業の担い手不足は全国的な課題です。

農水省の調べでは、1990年に480万人いた農業の就業人口が、2016年には初めて200万人を割り込み、今後もさらなる減少が予想されています。

そんななか、和田さんが常に見据えるのは、「子どもたち」。
農にあふれたこの地域を、100年後の子どもたちへどう伝えていくか。全国のなかで唯一人口が大正時代を下回ったという島根県で6次産業化アドバイザーとしても活躍する和田さんは、日々挑戦を続けています。

和田
とにかく、ワクワクしていたいんですよ。そしてワクワクする私の姿を子どもにみせたいと思っています。


和田さんたちにとって西の原レストハウスの運営はゴールではなく、魅力と可能性が溢れる地域への入り口でした。挑戦を続ける和田さんたちが、切り開いたその未来への入り口に、飛び込んでみたいと思いませんか?

名前 和田 裕子(わだ ゆうこ)
株式会社necco
西の原レストハウス
〒694-0223 島根県大田市三瓶町池田3294
営業時間 平日 :朝10時~16時
土日祝:朝10時~16時
水曜定休(水曜が祝日の場合、翌平日が休み)
電話 0854-83-2053
西嶋 一泰(にしじま かずひろ)

西嶋 一泰(にしじま かずひろ)

民俗学者・ライター

専門は祭り。島根県大田市で山村留学を絡めた地域おこしに従事。