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明治の町並みを着物で歩く”あでカワ”女子が急増中!?愛媛県内子町で始まった元美容師の挑戦

歴史情緒あふれる町並を、着物を着た若い女性たちが楽しそうに歩いていく――。
愛媛県喜多郡内子町では、しばらく前からこんな風景が日常のものとなりつつあります。

清水
着物っておしとやかなイメージがありますよね。でも、若い女性たちにもっと“キャピキャピ”しながら気軽に楽しんでもらいたいなと思って


飾らない笑顔でそう話すのは、清水香奈さん(34歳)。
内子町の町並を着物で散策する観光プロジェクト、「あでカワイイ!キモノでめぐる恋する町並み」の仕掛け人です。

立ち上げから約半年。
「あでカワプロジェクト」は、すでに県内外の観光客を惹きつける注目の観光プロジェクトへと成長中。

立ち上げにいたる詳しい経緯を清水さんに伺ってみました。

若い女性をターゲットに、観光客を引き寄せる!

 今日は香川県からお客様が来店。「着物を選ぶときが一番楽しい」と清水さん。

今日は香川県からお客様が来店。「着物を選ぶときが一番楽しい!」と清水さん。

松山市から南西に40キロ。
愛媛県喜多郡内子町は、江戸末期から明治にかけて木蠟(もくろう)の生産で栄えた小さな商業の町です。

重要文化財でもある芝居小屋「内子座」や、伝統的建造物群保存地区でもある八日市・護国地区の町家や商家の屋敷。
昔ながらの風情が今も色濃く残る町並みに、かつては多くの観光客が押し寄せました。

清水
着物や帯、小物はほとんど地域の方々からの寄付によるものです。プロジェクト始動にあたりお声掛けしたところ、素敵な着物をたくさんご提供いただきました。着付けも、予約が重なるときにはボランティアの方が来てくださいます。やっぱり、お客様といっしょに着物を選んでいるときが一番盛り上がりますね


そう話す清水さんは、宮城県出身の元美容師。
10年のキャリアを経て、まったく違うステージへ行きたいと、この仕事へ飛び込んだといいます。
近年足ぶみする内子町の観光振興を任され、この「あでカワプロジェクト」を立ち上げました。

「ゆかりのない内子町だけど、しっくりきている。これもご縁なのかもしれません。」と笑う清水さんは、ここで、着付け、ヘアメイクはもちろん、予約から着物の管理まで、プロジェクトにかかる作業を一手に引き受けています。

“あでカワ”という印象的なキャッチも、清水さんが考案したもの。
内子をイメージして浮かんだ和語「あでやか」に、若い女性を惹きつける「カワイイ」をつなげ、ターゲットとなる20代~30代の女性にしっかり訴求したいと考えたのです。

わたしには美容しかない!自分の経験を街の資源と掛け合わせる

着物という“非日常感”が味わえるのも魅力のひとつ。着物女子が歩けば町もパッと華やぎます。

着物という“非日常感”が味わえるのも魅力のひとつ。着物女子が歩けば町もパッと華やぎます。

とはいえ、プロジェクトは決して順調にスタートしたわけではありません。

美容師1本でやってきた清水さんにとって、地域おこしは未知の世界。
構想は当初から頭の中にあったものの、すぐに実現化には至らず焦りを感じる日々が続いたそうです。

それでも清水さんは、内子のことをもっと知りたいと独学を続けます。

本や資料の読み込みに並行して、地域の人たちへもヒアリング。
町並保存会の初代会長や、内子町で一番最初に保存活動を始められた方。
時には一緒に街を散策しながら、どんな思いで今の景観を守ってきたのかを学ぶ日々。

そこから次第にわかってきたことは、過疎化・高齢化の波が内子の観光事業にも大きな打撃を与えているという現実でした。
人口減少に加え、保存会の現メンバーもほとんどが70代。
現在も町家に暮らす人々に後継ぎがおらず、保存地区にも住み手のいない空き家が目立つようになってきているのです。

なんとかして、若い世代を内子に呼び込みたい。
内子の景観を守りながら、その魅力を発信したい。
清水さんは、決意のような気持ちがわき上がるのを感じます。

清水
外から来た人が新しい風を吹かせるのはなかなか難しいこと。でも、地域の人たちが大切にしている思いをベースに、自分の経験を活かしたいと改めて思ったんです。だって、私には美容しかありませんから!


普段の勤務先である「内子ビジターセンター」。あでカワプロジェクトの存在を地域の人にも知ってもらうため、和装で出勤する清水さん。

普段の勤務先である「内子ビジターセンター」。あでカワプロジェクトの存在を地域の人にも知ってもらうため、和装で出勤する清水さん。

あでカワプロジェクトを、地域の人たちと一緒に育てたい

追い風となったのは、愛媛県主催の「えひめいやしの南予博2016」(※愛媛県西南部の産業、自然、文化のPR事業/2016年3月26日~11月20日)でした。

開催に先立ち、南予博に組み込まれる地域の自主企画(観光・体験プログラム)の募集が行われたのです。
清水さんは早速申請書を書きあげ、認定を取得します。

南予博が引き金となり、地元メディアへの露出も増加。
プロジェクト開始直後には月5~6人だった利用客も半年が過ぎるころには月30人を超え、週末は予約であふれるほどになっています。

最近では、地域の美容室さんから「ボランティアで手伝いたい」と申し出をもらったり、内子の和紙を使った手作りの髪飾りを作っているおばあちゃんたちとコラボを始めたり。
プロジェクトの手ごたえとともに、内子にある素材や人が、どんどん集まりつつあるのを感じると話す清水さん。

清水
利用者の方が、“町歩きをしていたら地域の人たちに話しかけられて嬉しかった”と言ってくださるんです。地域の方々に受け入れられ、交流が生まれていることがすごく嬉しい。今後は、着付けだけじゃなくて郷土料理や工芸体験などオプションをつけて、町歩き全体をコーディネートしてみたい。内子が持っている素材をつなぎ合わせていけば、もっと面白いことができると思うんです


地域の人たちと一緒に作っていきたい――。
その思いで清水さんは、協力隊としての任期を終える1年半後をしっかりと見据え、このプロジェクトを大きく育てようとしています。

変わらないけれど、変わっていく内子の新しい姿。
内子から生まれた“あでカワ”旋風が、いつか地方再生のモデルケースとなる日もそう遠くないのかもしれない――。

そんな清水さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

着物を選ぶ眼差しは真剣そのもの

「私を受け入れてくれた内子町に恩返しがしたい」。あでカワプロジェクトの舞台となる「うちこの和」手しごと職人の家にて。

 

 

 

<あでカワプロジェクト>
[名前] 清水香奈
[プロジェクト名] あでカワイイ!キモノで恋する町並 うちこ着物/手しごと体験
[予約・問い合わせ] 0893-44-3790(内子ビジターセンター)
9:00~16:30(木曜定休)
[場所] うちこの和 手しごと職人の家 2階
[料金] 着物レンタル+着付け 3300円
<オプション>
①ヘアアレンジ 1000円
②内子の工芸体験 500~2000円
高田 ともみ

高田 ともみ

フリー編集者&ライター

地域メディアを中心に取材・執筆に携わる。愛媛県在住。