800年続くお寺に「住む」夫婦と、お寺を支えてきた人々

自然に囲まれた静かな環境で暮らしたいし、ある程度利便性も必要だと考えている。

そんな“ほどほどの田舎暮らし”を理想とする方にオススメしたいのが、“長野県でいちばん人口の多い町”箕輪町(みのわまち)

長野県にしては比較的暖かく、雪の心配もほとんどありません。

 
こんにちは、長野県在住ライターの信州さーもんです。

今日はそんな箕輪町の“あたたかさ”に惹かれて移住を決めたご夫婦を訪ねました。

移住した家は、800年続く古寺でした

愛犬のオリーブちゃん(9)とともに出迎えてくださったのはこのお寺に住む関野浩さんと、笑顔がかわいい理恵子さん。

愛知県出身の浩さんと長野県松本市出身の理恵子さんが箕輪町に移住したのは、2016年10月のこと。

今でも8世帯の檀家さんを持つ日輪寺。ご本尊は大日如来。

浩さんと理恵子さんが住んでいるのは、1191年に創建された日輪寺(にちりんじ)。上の平(うえのだいら)城城主・知久氏が祈願寺として開いたのが始まり。

「こことかほら、ななめに歪んでいるでしょ。隙間風が入らないように、修復しているんです」と浩さん。

このような木の歪みは”古民家リノベーションあるある”。お二人の改修作業はまだまだ始まったばかりです。

── 暮らしていて、気に入っているところはどこですか?

浩さんこの庭ですね。冬の間は少し寂しげですが、桜や紫陽花も植えられていて、とってもきれいなんですよ。

開け放たれた窓からは、見事な庭を見渡すことができました。

お庭には石仏や湧き水の出る水飲み場も。

日輪寺の清水は、今でも地元の方が汲みに来るそう。

理恵子さん春は窓を開けておくと、家の中に桜の花びらが舞い込んでくるんです!

── わあ、すてき! 四季折々の景色をお家から楽しめるんですね。

浩さんあとは生活環境ですね。雪もそれほど降らないし、空気も澄んでいて自然豊かで、ちょっと町へ出れば生活に必要なのものはすぐに揃います。
理恵子さんスーパーが近くて助かっています。

── なるほど、まさに「ほどほどの田舎暮らし」という言葉がぴったりですね。

「お茶でもどうぞ」と通されたのは日の差し込むあたたかなコタツ部屋

「お茶でも飲みながら話しましょう」

そう言われて通されたのは、豆炭こたつのあたたかなお部屋。新雪積もる信州の1月、豆炭と窓からの日差しに、ほっこりします。

豆炭コタツは、ヨガの生徒さんからのいただいたもの。浩さんは、ヨガのインストラクターを職業としています。

豆から挽いた濃い目の珈琲をいただく。なんと至れり尽くせり。

移住の決め手は、「住む人のあたたかさ」だった

「お腹空いているでしょう?」と出されたお汁粉に心も身体もポカポカ。これ、先日ついたお餅なんですって。

県主催の移住者交流会で、箕輪町の魅力発信室の方に「箕輪町は良いところだからぜひきてください」と言われたのがきっかけなのだそう。

浩さんその言葉にピンときて、行ってみることにしたんです。そうしたら役場の方々が本当に親身に接してくれて。

南信の気質なのかな、誠実な人たちばかりだなあって。それで箕輪町に好感を抱きました。

「お寺に住む。なんかいいなあ」で決まったお寺ライフ

── そこからなぜ「お寺に住む」選択肢が生まれたんですか?

浩さん箕輪町でいろいろと物件を見ていたのですが、なかなか決まらないなと思っていた時に、このお寺の話をいただきました。ヨガとお寺、きっと縁があると思いました。

浩さんは、ヨガ教室兼住居をずっと探していたのだそう。

── 理恵子さんは反対したり不安に思ったりは……?

理恵子さんいえいえ! お寺に住む。なんかいいなあって(笑)。

── お二人ともすぐ気に入って決められたんですね!

「守ってくれて、ありがとう。」

──「古民家に住むこと」と「お寺に住むこと」って、何か違いはありますか?

浩さん古民家を買ったら、それは自分たちの所有物になりますよね。

でも、お寺は僕らの所有物にはなりません。日輪寺はこの地域みんなが守ってきたものなんですよ。

移住前、地域の有志が屋根を改修した際に作った額。

浩さんみんなのお寺なので、地域の人に喜んでもらえるかいつも考えます。

修繕がこれからの部分は「うまく隠す」。

── 住んでいてみんなに喜んでもらえることは、お寺に住むメリットでもありますね。

浩さん毎年お正月には、地域の方々がお参りに上がってきてくださいます。

私たちがお茶出しをしていた時に、ある方が「お寺を守ってくれてありがとう」と言ってくださったんですよ。

これは、お寺に住んだからいただけた言葉だなあと嬉しく思いましたね。

地域の人が支えてきた日輪寺、その気持ちを受け継いでいきたい

浩さんお手製の「水路」。水はけの悪さを0円で解消した。

暖かい時期は草むしり、庭の剪定に修復作業。この場所に住むのは、決して楽なことばかりではありません。

浩さんヨガ教室ができ、生活環境もいい。ここに住んで喜んでくれる人がいる。私たちはここに住み、ここを守っていきたいと思ったんです。

── これから、日輪寺をどうしていきたいですか?

浩さん皆様が気軽に寄って、ホッとできる環境づくりをしたいです。

「ここに住んでいると、やりたいこと、やらなくちゃいけないことが次々湧いてきて、それをどうやってやろうかなって考えるのが面白いんです。」と笑い合う関野さんご夫妻。

地域の方々がお寺を任せて応援している、その気持ちがなんとなく分かった気がしました。

取材・編集/信州さーもん+プレスラボ
写真/五味貴志