湯浅くん写真伊東さん

塩尻えんぱーくに溢れる世代別の工夫

石井くん写真吹き抜け

多様な利用者のための空間設計

私たちは、司書の北澤さんに、えんぱーく館内を案内していただいた。えんぱーく館内は利用者の創造性を促す工夫に満ちており、特にその建築様式が際立っていた。

権威ある賞をいくつも受賞しているそのデザインは、まさにえんぱーくのコンセプトが体をなしたものといえるだろう。

写真を見てもらえばわかる通り、建物の中央部は吹き抜けになっているので、各階の通路から、えんぱーく全体を見わたすことができる。くわえて、館内全域にわたって、壁柱とガラス張りの会議室が不規則に並んでいる。

このようなフロアを歩き回ると、まるで森に生える木々を見るように、施設を利用する市民の姿が各階に見え隠れする。

石井くん写真壁

利用者の層もさまざまで、スーツ姿の人たちが会議をしていたり、主婦の方々が料理教室に参加していたり、高校生が勉強をしていたりする。利用者を色々な角度から「見える化」しているところが、なんともえんぱーくらしい。

また、このデザインは、スペース効率を度外視している点にも注目したい。スペースを効率的に利用することを考えれば、一般的なビルと同じように、規則的に部屋が並んでいるだけの建物にした方がよい。

大きな吹き抜けや、不規則に並んだ壁柱や会議室は、スペースの大きなロスになる。しかし、えんぱーくにとってはそれがいいのだ。

型にはまらず、ところどころにお茶目さすら見受けられるデザインは、利用者の発想や意見がみんなに望まれているような気分をつくる。この建物自体が、えんぱーくでの知恵の交流に一役買っているのは間違いないだろう。

利用者のための図書館に。今よりも。

石井くん写真北澤さん

えんぱーくは図書館にも大きな特徴がある。

まず、えんぱーくの図書館には、それをコミュニティースペースと区切る壁がない。

つまり、吹き抜けのある空間とひとつながりなのだ。当然、周囲の話声などはそのまま聞こえてしまう。しかし、これもまた、市民を「図書館は静かに」という規則や常識で縛らないという意味が込められている。

さらに、本の配架も一般的な図書館とは異なる。

通常、図書館の本は学術的な分類に従って並べられている。しかし、このえんぱーくの図書館はそうではない。利用する市民のことを第一に考え、市民の利用目的という新しい切り口で本を並べている。

たとえば、高校生が仕事について調べることを考え、職業関連の本をまとめたり、高齢者が老後の趣味を探すことを考え、高齢者向けの趣味関連の本をまとめたりしてある。これらは学術的な分類を横断した配架であり、司書の方の創意工夫が必要である。

北澤さんによると、このような特徴的な配架は、利用者が受付に伝えてくれる要望をメモしておき、後日それに従って企画されることもあるそうだ。なんと積極的な仕事ぶりだろう。えんぱーくが市民に望む、自発的な知恵の交流は、職員から率先して行われているのだ。

えんぱーくは、まだまだ不完全。

石井くん写真伊東さん

元えんぱーく館長(現 松商短期大学部商学科教授)の伊東さんは、えんぱーくはまだまだ不完全であるという。えんぱーくは現在でも、他に類を見ないほど、利用者の創造性をうながす工夫がなされている。しかし、伊東さんはさらにその先の目標を見据えていた。

現在、えんぱーくを利用している市民の割合は約4割と言われている。つまり、少なくとも市民の半数は、まだえんぱーくを利用していないのだ。

伊東さんが掲げるえんぱーくの最終目標は、塩尻市民全員が知恵と意欲を持ち寄り、新たな価値を生み出す交流の場になることだ。そのためには、できること、しなければならないことはまだ山ほどある。

すでにこれだけ先進的な市民施設でありながら、いまだその成長をゆるめない。このえんぱーくは、いまなお新たな可能性にあふれている。

石井大智

石井大智

早稲田大学/創造理工学部/一年

理系だって「まち」を学ぶ!
石井大智

石井大智

早稲田大学/創造理工学部/一年

理系だって「まち」を学ぶ!