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豊かな水の恵みがあるところには、うまい酒あり!?ゆっくり歩く松本さんぽ

長野県のちょうど真ん中あたりに位置する松本市。
漆黒の松本城がそびえ立ち、歴史ある城下町が広がるノスタルジックな町並が有名です。
しかし、歴史が大の苦手な私。この地にやって来た目的は、実は他にあるのです。
それは「水」です。まちの至るところから、水が湧いているとの噂を聞いてやってまいりました。

松本は『水の郷』と言われるほど、周囲の山々から清らかな水が溢れ出ているそうです。 旨い水のある場所には、きっと、美味しい食あり!美味しい酒あり!楽しい出会いあり!なのです。 
さぁ。マイコップ持って、旅の始まりです。

とはいえ、ここはやはり、まずは松本城を拝んでおきましょう。
さすが国宝の迫力、白漆喰と黒漆塗りのコントラストが美しいです。天守閣のすぐ後ろには、北アルプスの山々を望むことが出来ます。お堀にうつる景色も綺麗ですね。

松本城のすぐ裏手に位置する「竹風堂」さんでは、厳選された国産栗たっぷりの「栗強飯(くりおこわ)」が買えます。
注文すると、その場で蒸したてを折詰めしてくれるので、ホカホカの状態で食べれるのです。
松本城を眺めながら、甘く優しい香りのする栗強飯で腹ごしらえです。

せっかくなので天守閣にものぼってみようかなと思ったら、なんと甲冑武士に遭遇しました!!
旅の同行者が挑みましたが、真剣白刃取りに失敗して斬られました。残念、無念です。
こちらの甲冑武士さま、「どうします?白刃取り成功と、失敗パターンどっちにしましょうね?」
なんて聞いてくれたり、とてもノリのよい方でした。この後も、男子高校生グループに囲まれ大人気の様子です。

松本城をあとに徒歩1分。一軒家の引戸の横に「おやき」の看板が目につきました。 しかし、なぜか治療院の文字も…?“お気軽にどうぞ”の文字を信じておそるおそる入店、「こんにちは〜」。
「はーい」 と、奥から優しそうなおかみさんが出てきました。「鷹匠庵」さんは、どうやら本業は治療院だそうです。

自家製天然酵母の石焼おやきは、野沢菜・木の実・なす・あんこ…と種類も豊富です。
特注品の石釜で焼いてくれます。
「体に良いものを、色々と取り扱っているのよ。おやきも、天然酵母を使った手作り。どれも美味しいわよ!」
外はカリッとしていて中はしっとり。かみしめるほどに、素材の味を感じる素朴な味です。

水の生まれるまち 水音に耳を澄ませ 訪ね歩く

おやきを食べていたら喉が渇きました。そう、旅のテーマは「水」でした。
松本城周辺地域には、井戸や湧き水が豊富に点在しており、それらを「まつもと城下町湧水群」としています。
市が管理しているものから、無名の場所まで含め、その数30カ所以上!
誰でも無料で飲んだり持ち帰ったりできます。マイコップで私もひと口。柔らかく口当たりのよい軟水です。

歩けばたくさんの湧水ポイントがあります。裏路地にひっそりとあるポイントも見逃さないように、飲み比べをして歩きます。ご近所の方がペットボトルに注ぐ姿も見受けられました。
「それぞれ皆さん、お気に入りの箇所があるのよー。うちは、いつもここの汲んでるの」と、お母さん。
馴染みの「水」があるなんて、ちょっと素敵!

湧水をまわりながら、まちを散策していると、ちょっと気になる食堂を見つけました。
レトロ感あふれる佇まい。ちょっと歩き疲れたし、ひと休みすることにしました。
店内を覗くと、常連さんらしきお父さん達がたくさん!
「なに観光客?どっから来たの。おすすめは、ギョウザだよ〜!」と、ビール片手にお父さん。
創業42年の「ハルピン食堂」さんは地元のサラリーマンに愛される、安くて旨い評判のお店のようです。

お父さんおすすめの、ギョウザを注文。小ぶりでカリッとジューシーです。

お店のご主人が子どもの頃にハルピン(中国)で食べたギョウザを再現した一品だそう。
ギョウザラーメンというメニューがちょっと気になります。次回、チャレンジしてみよう。

水が繋ぐコミュニティー 地域に根ざす酒蔵

ところで、忘れちゃいけない、「水」がうまい場所に必ずある、うまい酒のこと。 近くに酒蔵はないのかしら?と、探したところありました!
随時、蔵見学も受付けているとのことで、電話でアポ取りです。 「え!今から?良いわよ、お待ちしてます〜」と、急なお願いにも快く受けて下さいました。
松本城から徒歩15分程度の場所にある、向かうは「善哉(よいかな)酒造」さん。

やっぱり、蔵の軒先にありました!
善哉酒造の仕込水専用井「女鳥羽の泉」は、平成の名水百選にも認定されているそうです。

「あら、さっき電話くれたお客さん?ご案内します〜どうぞ!」とっても元気な女将の穂高さんが登場。
とってもお話上手で、どんな質問にも間髪を入れず答えてくれます。楽しくて頼りになる女将です。

「試飲して行くわよね?あなた達が来るって言うから、何か酒のおつまみでも作ろうと思ったのだけど。
お客さん来ちゃって、自家製のフキ味噌しか用意出来なくてごめんね〜。お酒準備するから、はい。食べてて!」
その心遣いが、嬉しすぎます!!
試飲コーナーというにはアットホームすぎる店先のテーブルには、常連さんがちょこんと座っていました。

「はい。どれから飲む〜?」という女将。次から次へと試飲をさせてもらいました。
途中でつまむフキ味噌がまたよく合う。さすが女将!

「酔っぱらわないようにお水も飲みなさいね。外の湧水を自分で汲んで飲むのよ〜」
刻々と、湧き出る仕込水をはさみながら試飲する日本酒。なんとも贅沢な時間です。

湧水名にもなっている善哉酒造の代表作「女鳥羽の泉」大吟醸は、第83回関東信越国税局酒類品評会で優秀賞を受賞。
ふくよかでフルーティーな香りと、スッキリとした飲み口でした。

試飲をしている最中に外を見ると「女鳥羽の泉」には、ペットボトルを持って水を汲みに、何人もが訪れていました。
私が水を汲もうと待っていると、「ほら貸して。先に汲んであげるから」と、慣れた手つきで水を注ぎ入れてくれる優しい方も。

店を覗き込んで女将に挨拶していく方も多く、酒蔵と水と女将の人柄が、地域のコミュニティーを繋いでいるようでした。

お気に入りの日本酒を見つけ数本ほど購入。「雪の降る時期も良いわよ。また来たら寄ってね」
女将に御礼を言い、来年の新酒のお知らせをお願いして、酒蔵を後にしました。

長い夜のお楽しみは 地元の人に聞く

ほろ酔い気分になったところで、松本の夜はこれからです!
レトロな看板が気になる横丁があったり…。気になるお店がいっぱいです。

まずは軽く立ち飲み屋さんにで一杯!お店の方に、オススメのお店を聞いてハシゴすることにしました。
銘店に出会う確率を上げるコツは、やっぱり地元の人に聞くこと!

信州といえば、お蕎麦を食べとかないとね。

この辺りで「煮イカ」というと、塩味の煮イカが出てきます!
醤油で煮込んだ煮イカをイメージしていたので衝撃的でした。
長野県の一部では日常的にイカの塩漬けが食されているそうで、地域の伝統食なんですって。

他にも、山賊焼きという鶏もも肉にニンニクを効かせた唐揚げなど、ご当地グルメが豊かです。
お野菜も豊富で、美味しいものがたくさんありました。

まだまだあるよ 松本の魅力

まちをフラフラっと歩いていると、ポツンと何故か不思議な方向をむいた古いポストに遭遇したり。
明治前半に建てられた重要文化財でもある旧開智学校があったり。古民家カフェがあったり。
歩いてまわれる距離に、見どころが満載です。

さて。家路についたら、松本の思いでをアテに、たくさん買い込んだ日本酒を飲むのも、また良い時間です。
また違う季節にはどんな景色が見えるのだろう。
善哉酒造の女将が教えてくれたように、今度は雪降る松本に行ってみたいなぁと思います。

小高朋子

小高朋子

旅食ライター・カメラマン

1982年、神奈川県生まれ。アパレル業界、映像製作会社を経て、フリーランスに。持続可能なモノづくりの可能性を求めて各地を巡り、地域の食文化、工芸品、産業などを取材し、写真、映像も用いてその魅力を紹介している。 旅と、おいしい食べものと日本酒が何よりも好き。
小高朋子

小高朋子

旅食ライター・カメラマン

1982年、神奈川県生まれ。アパレル業界、映像製作会社を経て、フリーランスに。持続可能なモノづくりの可能性を求めて各地を巡り、地域の食文化、工芸品、産業などを取材し、写真、映像も用いてその魅力を紹介している。 旅と、おいしい食べものと日本酒が何よりも好き。